#4 トイレは建物の“顔”。責任を持って清掃を

 なぜトイレをキレイに維持しなければいけないのか。それは、トイレがその建物の“顔”だから。ただお給料をもらい、時間通りに清掃を終えることを目的とせず、自分がその建物に入っている会社の一員だと意識し、責任を持って清掃してほしいのです。

 例えば自分の家にお客様がいらっしゃる時、キレイに清掃をしてから迎えますよね。同様に、担当した建物を自分の家だと思って清掃してほしいのです。建物を訪れたお客様がトイレに入った時、もしそのトイレが汚かったら、「何、この会社!」と思うでしょう。トイレを見た感想は、そのまま会社自体の評価になってしまいます。そしてお客様の評価は、自分にも返ってくるものです。よい評価が得られれば、もっと楽しく仕事もできるし、モチベーションも上がる。いいこと尽くめだと思います。 中にはトイレ清掃が嫌いで仕方ないけれども、「仕事だから」という理由だけで続けている人もいます。その建物や会社にとって大切な仕事でも、清掃している本人にとって大切でなければ、モチベーションは上がりません。トイレをキレイにすれば、きっと利用者から感謝されるはずです。人に感謝されれば嬉しい。だけど、その「嬉しい」という思いに至るまでの心理的な部分が難しいんですね。 そこに至るには自分を信じて、今やっている仕事を続けていくしかない。でも、ただ仕事をするだけでは面白くないので、日々の仕事の中に一つでも楽しめることを見つけていきましょう。モチベーションを持って楽しく仕事をすれば、心身共に健康でいられます。健康なら自然に笑顔も出てきます。人は、笑顔が一番の安らぎだと私は思います。

 私の場合、お金を稼ぐには、この仕事しか選択肢がありませんでした。だから、初めは仕事に好きも嫌いもなく、モチベーションはいただいたお給料で欲しいものを買ったり、おいしいものを食べたりすることでした。でも、嫌いなものも時間が経つにつれ、慣れて考えが変わっていき、好きになることはよくあります。私も今は笑顔で仕事をしています。 自分のいる場所がキレイなのは、誰でも気持ちいい。つまり、この仕事は人に幸せを与えられるのです。だから、この仕事に携わる人たちみんなに、自信と誇りを持ってほしい。 私は会社の若手にもよく言います。

 「あなたたちが頑張ったから、こんなにキレイになったのよ。自信と誇りを持って」と。  そして「これ以上できません!」と言った人には、こう言います。  「じゃあ、振り返ってみて。あなたが今まで頑張ったのは何だったの? “ありがとう”って感謝されたことはない? そう言われても今、“できません”と言えますか?」

 精神的に追い込まれている時、この言葉を掛けると、皆よく頑張ってくれます。  トイレをキレイに清掃したくてもどうしたらいいかわからない人は、まず上司に相談してみましょう。何か解決策につながります。「みんなでキレイにしていこう」という気持ちを持つ。それが私のしたいこと。みんなでビルメン業界を盛り上げていきましょう。

新津春子略歴
1970年、中国・瀋陽生まれ。日本空港テクノ株式会社社員。「環境マイスター」として羽田空港で活躍。2018年よりハウスクリーニング「思う心」を率いる。20年7月、YouTube『新津春子の優しいお掃除チャンネル』を開設。