#11 現場において重要なのは複数の目による確認

 これまでのコラムで紹介してきたような私の野球人生が、他の皆さんと比較して、本当に“コツコツ”型に当てはまるかどうかはわかりません。運も良かったのだと思います。

ただ一つ言えるのは、常にその時自分が置かれた場所で、「何とかここで頑張ろう」という気持ちを持てたこと。今のビルメン業にしても、「この仕事で頑張ろう」と心に決め、20年以上続けてこられたことは良かったなと思っています。おかげさまで徐々に、徐々にですが、仕事になってきています。

 私は自分を“経営者”だと思ったことはありません。現場の仕事もすべて、自分でやっています。今は知り合いの紹介などで、常時23人のアルバイトさんに現場を手伝ってもらっています。彼らはアルバイトというより、私にとっては一緒に仕事をする仲間、同僚のような感覚です。

 こうした“同僚”スタッフたちは20歳代から50歳代まで、義理の弟を含め男女半々。私が一番年上になります。皆、家の掃除くらいはしたことがあっても、仕事としての清掃は未経験の人がほとんど。そこで、初めはテナントビルの外壁など、手作業での拭き清掃を主に担当してもらいます。中には1213年一緒に仕事をしてくれている女性スタッフもいます。私が機械を使うため別の場所にいても、ワックスを塗ったり、窓を拭いたりといった作業をすべて一人でやってくれるので、安心して任せています。

 現場で注意しているのは、作業後、必ず他のスタッフとお互いに確認し合うこと。一人では見落としや、やり残しの恐れがどうしても出てきますから。

人によって気付かないこともあれば、人が見逃すような細かいところに気付く人もいます。年齢にかかわらず、若いのにしっかりやってくれる人もいます。また、新しい人が来ると、意外にそれまで皆が気付かなかったことに気付いてくれることもあります。

そして誰もが経験を積んで、いろいろなところに気が付くようになっていきます。だから、複数の目で見ることが大切だと思うのです。

 私は“健康オタク”ではありますが、野球をやっていた頃、何度か腰を痛めています。現役引退の前年(1991年)には、年に3回もギックリ腰を発症し、動けないことさえありました。今でもワックスを塗る時や機械の上げ下ろしをする時など、痛みを感じます。たまに接骨院に行き、マッサージをして、極力腰に疲労が溜まらないようにしています。

 今の現場は、私の知り合いから「山内がやるなら」ということでいただいたものがほとんど。信頼関係でいただいた仕事ですから、体力の続く限り、自分でやっていきたいとは思っています。

とはいえ人材育成も、今後は考えていかなければならない課題ではあります。私がいつまで現場で作業に当たれるか。私が動けなくなっても、現場自体は残ります。まだまだ自分でバリバリやるつもりではいますが、先々のことを考えると、やはり自分より10歳以上は若い人に仕事を任すことができるようにしておかなければならないのでは…とも思っています。

山内和宏(やまうち・かずひろ)氏略歴
 1957年9月1日、静岡県生まれ。駒澤大中退後、社会人野球のリッカーミシンを経て1981年にドラフト1位で南海(現ソフトバンク)ホークスに入団。83年には18勝で最多勝のタイトルに輝き、82年から85年まで4年連続二ケタ勝利を記録。90年のシーズン途中に交換トレードで中日へ移籍し、92年に現役を引退した。引退後は広島県福山市でビル管理会社を経営している。プロ野球12年間の通算成績は97勝111敗、防御率4・30。オールスターゲーム出場3回。