#16 今年も引き続き、プロ意識を持ち、清掃業界全体のレベルアップに努めていきたい

私が生まれた中国では、年末の大掃除を家族全員で行います。お正月の買い出しで、重いものを持つのはお父さんと男の子の役目。お母さんと女の子は、家の飾り付けを担当します。お正月の御馳走に何を食べたいかは、家族全員で話し合って決めます。 お正月には家族だけでなく、友人やお世話になった方々なども家に招いて、一緒にお祝いします。日本人は一般的に、家族だけで過ごしますよね。私の旦那さんは日本人。しかも大勢でワイワイやるのがあまり好きではないので、お正月も元日以外はほとんど2人で静かに過ごします。 義母が健在な頃は、山梨にある夫の実家で元日を迎えていました。ある年、夫に教わって山梨名物のほうとうを作ったのですが、焦がして大失敗!

 義母が大切にしていたボウルに穴まであけてしまいました。私が謝ると、義母は「古いから大丈夫よ」とニコニコしています。肝心のほうとうも火が通りすぎて、すっかり柔らかくなってしまいました。それなのに、義母も旦那さんの姉妹も一言も文句を言わず、「おいしい、おいしい」と言って食べてくれたのです。 義母はそのわずか1カ月後、体調を崩し急逝。世の中の“お嫁さん”たちは「お姑さんが怖い」と言うようですが、優しい義母のおかげで、私は一度も怖いと思ったことがありません。いつも1泊で帰ってしまっていたので、台所を掃除する以外は何も気づいてあげられなかったことを、今も申し訳なく思っています。 ここ数年は、私の実家で元日を過ごすようになりました。中国では場所にもよりますが、豚の頭を丸ごと煮て、神様にお供えします。それをテーブルの真ん中に置き、家族みんなで他のものから食べ始めます。神様が豚の頭を食べ終わったかなという頃、それを家族で切り分け、いただきます。旦那さんが初めてわが家で正月を迎えた時、この豚の頭を見た途端に食欲を失い、その日一日、何も食べられなくなってしまいました。沖縄の市場で見かけるものは皮のみですが、中国では頭丸ごと。やはりショックが大きかったようです。 2016年を振り返ると、これまで想像もできなかったような1年でした。本来の清掃業務は全体の2割弱ほど。あとはメディア対応や講演会などに追われたからです。とにかく忙しかったけれども、清掃関係以外の方とも多く知り合い、いろいろなことを勉強させていただきました。 今年は現場のインスペクションなど本来の業務を、できれば4割ぐらいまでに戻して……残りの時間は、この業界のレベルを上げていくためのあれこれを、継続してやっていきたいと思います。私たち清掃作業員がもっとプロ意識を持ち、業界全体のレベルが上がれば、仕事を発注する建物のオーナーさんたちの考え方も変わるはず。そうすれば、私たちの待遇もよりよくなっていくでしょう。そうやってみんながいい方向に回っていくことを、今年も願ってやみません。

新津春子略歴 1970年、中国・瀋陽生まれ。日本空港テクノ株式会社社員。「環境マイスター」として羽田空港で活躍。2018年よりハウスクリーニング「思う心」を率いる。20年7月、YouTube『新津春子の優しいお掃除チャンネル』を開設。