#1 コラムを通して同業他社の皆さんと交流を

 今回から、このコラムを担当させていただくことになりました。
 まずは、私の自己紹介をさせてください。私は今、日本空港テクノ株式会社に勤務。羽田空港の清掃業務にあたりながら、『環境マイスター』という役職をいただいて、全国ビルメンテナンス協会、全国ハウスクリーニング協会にも、講師として研修生に対して指導をしています。

 私は17歳のとき、中国残留孤児の父、中国人の母、きょうだいと共に、一家で日本にやってきました。日本語を満足に話せない高校生の私ができるアルバイトは、清掃の仕事だけでした。それが、この業界との出合いです。
 実地で清掃技術を身に付ける一方、職業技術専門学校でビルクリーニング管理について、基礎から勉強し直しました。その後、今の会社に入社し、羽田空港で働き始めました。早いもので、もう21年になります。

 私は清掃という自分の仕事に誇りを持ってやっています。この仕事を長く続けてきた方は皆さんそうだと思いますが、自分を“職人”だと思っています。そんな中で、まだまだこの業界にはみんなで考えていかなければならない、変えていかなければならないことがたくさんあると感じるようになりました。
 その一つが、技術指導です。会社によって、清掃のやり方は全く違います。私は今の会社に入社する前、いくつかの清掃会社で仕事をしましたが、そのたびに違ったやり方を覚えなければならず、戸惑いました。 清掃は、道具さえ揃えば誰でもできると思われがちですが、気持ちを込めないとできない仕事です。また、やればやるほど奥の深い仕事でもあります。そのため、協会の研修で教わる基本中の基本から先のところは、基準になるものが見えにくくなっています。「これは清掃の先輩がなんとかしなければいけない」と思いました。

 例えば道具の使い方。タオル一つとっても、基本の八つ折りと拭き方、絞り方程度しか教科書では紹介されていません。タオルを使って、どんなことができるか。それぞれの道具を使うポイントも、清掃員は知っておかなければならないと思います。 アイデアや工夫は、つまり“清掃のコツ”。その“コツ”を後輩たちに教えていかなければ、業界全体の清掃技術のレベルがどんどん下がってしまいます。
 先ほど、清掃のベテランは皆自分を〝職人〟と思っている、と書きました。とはいえ、それぞれ得意なことも違えば、浮かんでくるアイデアも違うでしょう。
 しかし、この業界はほとんど他社の人間との交流がありません。私がこのコラムを引き受けたのは、この場を通じて、皆さんに私の考え方、やり方を知っていただきたかったから。そして他社の皆さんの考え方、やり方を教えていただくきっかけにしたかったから。 これを機に皆さんとの交流──技術や知識の交換が生まれれば、業界全体のレベルを上げることにつながると思うのです。それがひいては、お客様へのサービスにつながる。そんな思いを込めて、これからコラムを続けます。

新津春子略歴 1970年、中国・瀋陽生まれ。日本空港テクノ株式会社社員。「環境マイスター」として羽田空港で活躍。2018年よりハウスクリーニング「思う心」を率いる。20年7月、YouTube『新津春子の優しいお掃除チャンネル』を開設。