寄稿 従業員が経営を助けてくれる
BUI研究会同人 井村日登美
最近よく聞くのが「人がいない」「人手不足」という言葉。東京では人がいないので、飲食店を開店できない。営業できないところもあるという。労 務倒産もありえる状況だとか。しかし労働力が豊富でもサービスの質に影響があるようでは意味がない。
先日、大阪の某ホテルのコーヒーショップ
に行った。周知の通り、ホテルはサービス業の王様である。サービスの品質と労働力のバランスを常に考えている業種でもある。ところがその時、期待
を大きく外してくれた。店内はお客様もまばらな状態なのに、ウエイター、ウエイトレスは山ほどいる。山ほどいるのだが、案内するといいながら案内
もしない。コーヒーのお代わりをもってきてほしいといえば、忘れていた・・。もう1度繰り返すと、ウエイター、ウエイトレスは山ほどいる。何をし
ていいのかわからなのか、手ぶらでブラブラしている。そばにいた友人が「人手不足なのに、ここにはこんなにいっぱいの人が・・。」それにしては・
・」と言う。「それにしては・・サービスが良くない」のである。 頭数がいても、それぞれが機能していない。規定の労働量をこなしていない。そ
れ以前に、サービスの品質が低下している。1人1人の能力が低い。つまりこういう状態こそが「真性の人手不足」である。最近の労働力不足はこうい
うケースも多いのではないだろうか。 量よりは質の問題。現在経済産業省が躍起になっているサービス業の労働生産性に通じるテーマでもある。こ
れについてはこれまでもいろんな仕組みが考えられてきた。 以前、病院清掃で清掃員の作業を時間でチェックするシステムがあった(今もあるかも
しれません)。作業開始から終了まで清掃員の移動に合わせて、数ヵ所に時間データをチェックする機器を整備。清掃員はその場所に行く度に、設置さ
れた機器にデータを入力する。それにより清掃員が何時何分にその場に来たのかを把握でき、ムダのない清掃作業が可能になるというわけだ。 ムダ
をなくすという考え方で労働力の効率化を進めている事例がもう1つある。北海道の某旅館は管内の随所にカメラを設置し、従業員の数と動き、そして
お客の数をチェック。朝の土産店やラウンジなどお客が多い箇所に、比較的利用の少ない箇所から従業員を応援させるという形をとっている。教育が行
き届いているのか、サービスの質を落とすこともなく、うまく稼動しているという。 サービス業においてもっとも必要で負担となるコストが人件費
である。これがもっとも効率的に運用できれば、儲かる仕組みができた!といっても過言ではない。ところが、この2つの事例を模倣する動きはあまり
見受けられない。なぜか。考えてみるに、この2つの事例は「人間」と「システム」の地位が逆転し、システムがあり人間がそれに従う。そこには人間
の知を必要としない。その分、うまく稼動している病院や旅館は人間の知がもつ欲求をカバーできるだけの強いリーダーシップがあり、欲求を満足させ
るだけの仕組みをもっているといえよう。だからシステムだけを真似してみようというような簡単な考え方では効率化は難しいのである。 人の問題
は企業の永遠の課題でもある。全米でホスピタリティビジネスに成功したある経営者が言った。「経営を助けてくれるのは従業員である」。日常的に解
雇がつきまとうアメリカらしい見解だが、そこには真実があると思う。 労働力不足は少子高齢化に労働者人口の減少、サービス産業の増加などの状況
から考えて将来に向けて続くものだと思われる。となれば、作業の品質を落さずして仕事を継続するには「従業員の協力」なしでは難しい。と考えると
、今ほど従業員とより多くの対話を持ち、モチベーションを高める作業を進めていく必要性を感じる時はない。
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