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“気にくわぬ風もあろうに柳かな”という句がある。これはどんなに厳しい風が吹こうとも(経営環境が厳しくとも)、柳のように、さらりと受
け流すという意味だろうと思う。私は前に、この欄で「今、ビルメン業界は変わるときだ」と書いた。その記事を読んだ読者(経営者だろうと思う
)から、冒頭の句に寄せた反論をいただいた。「今は動かずに、じっとこの強風が去るのを待つべきだ」という主旨だった。
企業というのは、
継続発展が要求される。そして発展のためには「変化」が必要である。現状維持は寧ろ退歩を意味する、とも書いた。いま、ビルメン業界は“冬の
時代”だと思う。だから、今こそ、「変わらなきゃ」という意味の浸透と醸成に、ビルメン経営者は意を注ぐべきだという趣旨である。 マリナ
ーズのイチロー選手がオリックスブルーウェーブ時代に「変わらなきゃ」というコマーシャルに次いで「変わらなきゃも変わらなきゃ」というコピ
ーをテレビで流していた。今こそこのコマーシャルがピタリと合う時だと思う。というのは“木々は冬の間に根を張る”と同様に、業界も厳しい時
であればあるほど経営者は歯を喰いしばってでも、変化に挑戦しなければならないのではないか。 企業業績の悪化の原因は「変化を嫌う」とい
う以外に、もう一つ「決めるべきこと(理念・方針)を決めずに、あるいは決めたにしてもそれを実行しない」ことが挙げられる。ビルメン経営者
が犯しやすいことの一つに「従業者にビジョンなき仕事をさせる」ということがある。従業者のやる気を自らそいでいるのである。ビジョンとか目
標が人を動かす。 ここで一つの寓話をお話しよう。『ある心理学者がある工場に出向いて、そこで働いている労働者二人に「上司の了解を得て
いるので、仕事を手伝って欲しい。そのかわり賃金を二倍支払う」と話した。二人に命じた仕事というのは、工場の広い敷地内に深さ三〇センチの
穴を掘る、というだけのものだった。二人は二倍の賃金を貰えるということで喜んで仕事にとりかかった。が、昼休みになって二人は学者のところ
にやって来て「こんな大変な仕事はやめたい」と言った。そこで学者は「約束ですから、半日しか働いていませんが、賃金は倍の一日分払いましょ
う。ところで、この仕事を頼んだのは、この敷地内に水道管が敷設されている筈だが、図面もなく、どこにあるかを二人に探してもらうために穴を
掘ってもらったのだ」と話すと、二人は「それなら午後も続ける」と言った』という話である。目標がはっきりしたので、やる気が出てきた。目標
のない仕事ほどつらいものはない。人は金だけでは動かない。もし金額だけに頼ろうとするなら、この話のように、せいぜい半日位が関の山であろ
う。 先日、NHKテレビで、ミシュランガイドで三ツ星を獲得した東京の「すきやばし次郎」という店のすし職人のプロ魂と、生き様を放送し
ていた。次郎のすしは、フランス料理の一流のシェフの舌をも驚嘆させたという話であった。そんなに旨いすしなら、さぞ値段も高いだろうと想像
した。仄聞すると、昼食で二万五千円は用意しろ、と言う。たかが昼食に、と貧乏人は驚く。入店するにも予約で一杯だと言う。「価格だけではな
いんだなあ」というのが、貧乏人の実感である。 顧客は三つのことに関心がある。それは「値段、価格、プライス」だ。この三つのことに関心
があるのは何も顧客だけとは限らない。今のビルメン業の経営者の一部にもそういう人はいる。価格に一喜一憂しているビルメン経営者たちは「す
ぎやばし次郎」の話を聞いて何を思うだろうか。自分たちの考え方や方向性が間違っているとは思わないだろうか。実は、BIU研究会はその間違
いへの気付きと、ブランドイメージの向上に取組んでいる。つまり「百円のものを百二十円で売る」という模索である。
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