私の知人で大阪市内の老人福祉施設でビルメン作業員として働いている吉田さん(婦人)がいます。吉田さんは年金の受給資格があるといっていますので、もう60才をいくつか過ぎた年令になっているだろうと思われます。

 彼女のビルメン作業歴はもう6〜7年になるといっています。中肉中背の健康そうな体つきで、体の不調でこの仕事を休んだことは殆んどないといっています。大変元気旺盛で貴重なビルメンの作業戦力です。

 しかし吉田さんは今、大きな悩みをかかえています。彼女はいま、2時間半のパートタイマーとしてビルメン会社から老人福祉施設の現場へ派遣され、午後2時から4時半までが決められた作業時間になっています。しかし彼女の場合、この仕事が2時半ではどうしても完了せず、早くて3時間、場合によっては3時間半働いて帰えるのが普通になってしまっているのです。

 仕事を請負っているビルメン会社では、吉田さんに2時間半の仕事として契約しているのでもっと早く仕事を終る様に指示するのですが、彼女は賃金の支払いが出る、出ないは別にして、「仕事を中途半端で止めることは気がすまない」「自分流の仕事のスピードでやりたい」と云って、作業時間をオーバーして仕事を続けています。

 一方、会社の方はこの施設の当事者と何回か状況を話し吉田さんの作業時間をあと1時間延長して契約を更新してくれる様交渉するのですが、現時点で「予算の増額は出来ない」ということで認めてもらえない、それでは残された方法としてこの仕事を2時間半でやれる他の作業員と吉田さんを交替させる方法はどうかという事ですが、この施設の広さや吉田さんの仕事振りからみて彼女以上に元気で、手早いベテラン作業員でなければならず、その様なスーパースターでは、給与条件が合わないという問題につき当ってしまいます。

 吉田さんは前記の様に、生来のキレイ好きの真面目人間で、今の仕事に対しても、積極的にとりくんでいるので、施設側の人達も、彼女の仕事振りを評価し、永く続けて働いてくれる様期待しています。

 彼女としてはこうした事情をふまえてあと1時間か1時間半の残業賃金の支払いが出なくても、今のカタチを変えず仕事を続けたいと思っているのだそうです。

 ビルメン会社側でも今の吉田さんを無給でサービス残業を見てみぬ振りを続けるワケにはいかないと考えてはいるのですが、今のところ話はここでいきづまっています。

 さて、今ビルメン業界では、この話に似た「当初見積りの間違い?」から出発した無理なカタチがあちこちにある様に聞いています。或いは発注者側も無理を承知で発注せざるを得ない状況にあるのかも知れません。それぞれにそれなりの理由があるのでしょうが、現場の当事者としては何とか解決してもらわないと困ってしまいます。

 しかし私はこの問題解決の出口をビルメン側と契約当事者の二社だけでは見つけることは、むずかしいと考えています。

 費用は、予算で確定しているものであればその変更は原則「不可能」一方ビルメン側は国の決めている最低賃金以下で人を集めることは無理で又これは「禁じ手」で両方の出口はふさがっています。

 結局この問題の解決は契約担当者とビルメン側二者の枠をこえて設計、設備、備品メーカーなどと勿論、当該施設の予算担当者も参加して、どうしたら「汚れない」「汚れが付いても取れ易い」「清掃のやり易い」いわばメンテナンスフリーのトイレ室洗面所の構造に代えられるか改造を実行出来るかを考える以外にないと思います。少くとも30〜50%の省力化が出来ないかを考えることでしたが、トイレの掃除といえばそれまでかも知れませんが、一日3時間の仕事は月25日で75時間、10年経てば直接人件費だけでも時間/千円として900万円の費用をつぎ込むことになります。実際にはこれに資材費、洗剤などを使っています。今、この費用をメンテナンスフリーのための設備や機器にどれだけ使えるかを検討してみては如何でしょうか。

 メンテナンスフリーといっても清掃作業員ゼロというのは理想ですが無理でしょう。しかし前例の様に900万円の中の1/2、450万円を使って作業時間を1時間半に短縮することが出来ないかを当該関係者全員で考えてみては如何でしょう。設備機器の進歩の現状からみて、やり方を工夫すればもっと早く終了する可能性も充分考えられます。そしてこれによって問題解決の出口はみえてくるものと考えます。

 洗面所周辺の大小の便器、鏡、トイレ室に使われる床材等は光触媒製品の表面加工によって汚れはつきにくく、すばらしいデザインのものが開発され、その洗浄時間は、うんと短縮されています。更にバイオ製品の開発によって汚れが分解され堆積しない製品が続々と開発され、既に市場で活躍しています。

 これらの動きは決してトイレ周辺のみではありません。例えば家庭の主婦の働き場台所周辺も電子調理機器の開発によって主婦は台所の油汚れから解放されつつあります。

 吉田さんの悩みは現在のビルメン業界に共通した大きな問題です。私見が問題解決の一つの糸口になれば幸です。


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