BM技術講座

木村光成(木村ブラシ代表)

ビルメン現場の肌荒れ災害


 ビルメンテナンス業の労災保険の料率が引き上げられ、業界全体で8億4000万円の負担増になる。労災防止のキャンペーンは以前から行われ、事例に学ぶ労働災害防止などはあらゆる記事の中でも、最も長い掲載期間がある。
 ところで我々の現場で最も多い、身近な災害は肌荒れだろう。ほとんどの人たちが経験している。しかし、最大の労災ともいえる肌荒れについては、ほとんど取り上げられていない。おそらく転落、骨折など目に見える事故で病院に通い、休みを取る場合だけが労働災害に加えられているからだろう。
 また、肌荒れの原因が明確でないことも労災に入れられない理由であり、同じ洗剤で肌荒れを起こす人と起こさない人がいたり、手あれ程度で労災の申請など出せる雰囲気でないことも要因だ。つい最近でも、手袋などはプロが使うものでないという認識を持った監督者がいた大手企業の現場もあった。
 ところが、国民生活センターや化成品PLセンターなどには、洗剤が原因と見られる、かぶれや皮膚障害の相談が多数寄せられている。中にはカーペットクリーニング後に、素足で歩いたら家族全員の足の裏が赤くなったという例や、ハウスクリーニング業者が足に洗剤をかけて重傷の皮膚障害を受けた例もある。
 ビルメン業界では問題にされていないが、現場でかぶれや皮膚障害が全くないのだろうか。使用洗剤は家庭用と違い桁外れに強力なものが多い。筆者が目撃した例でも、原液の剥離剤を足にかけただけで皮膚が変色した事例もある。ところがビルメン業界では、ほとんど洗剤による皮膚障害事例や皮膚障害の災害防止キャンペーンは見かけない。
 ビルメン現場で使用されている洗剤は家庭用洗剤より、はるかに強力な薬剤が使われている。フッ化水素酸、酸性フッ化アンモニウム、塩酸、硫酸、苛性ソーダ、次亜塩素酸ソーダ、35%過酸化水素など、劇物を使用した洗剤類がある。これらは外壁、トイレ、カーペットにこぼした日本茶やコーヒー、コーラなどのしみ抜きに使用されている。苛性ソーダは換気扇やパイプのつまりに使用される。
 汚れを簡単にすばやく落とすために、これらは、ますます多用されている。下請け現場はしみや汚れを落としていくらの世界である。また、需要があるため販売業者も率先してこれらの洗剤を販売している。もうひとつの販売理由は利幅が大きいことである。樹脂ワックスを10缶売るより、弗酸系輸入洗剤4g売るほうがよいとの声もある。大手洗剤メーカーはこれらの洗剤を危険性の上から販売しない。そこで輸入業者や中小洗剤メーカーの独壇場になる。最近は工業用洗剤メーカーの参入も多い。
 前にも述べた通り我々の現場ではこれらの洗剤は必要である。問題は正しい使い方と正確な危険性の表示と正確な内容表示である。まず危険性についての表示は劇物などの表示が赤字で小さく記載されている場合が多い。そして使用法は通常の洗剤とほとんど同じであり、劇毒物含有の洗剤でも変わらない。むしろ広く家庭で使われるカビキラーなどの表示のほうが危険性を明確に表示している。
 問題なのは業務用ということが隠れみのになり、危険性をあまり説明せず、安全性を強調している点である。いくつか例をあげる。

@環境にやさしい洗剤(燐を含む)
A燐を含むが使用量が少ないため下水道で薄まる。
B強酸性であるが体にやさしい。これらは我々の体には余り関係がない。
C弗素は虫歯予防にもつかわれている。
D過酸化水素は手につくと白くなるが害は全くない――など。

 最も危険な例はコーヒー、コーラ、ジュース、さびなどのしみぬき剤で弗酸系を含む製品であり、表示のない商品である。また、説明や使用法が正確でない事例もある。
写真1 過酸化水素による指の焼けである。


写真2 この系統のしみぬきの説明であるが、説明が不十分であり、分解して
出る気体は炭酸ガスでなく酸素のはずであるが、しみ抜きの内容が全くない。


 いずれにしても洗剤による皮膚障害は増加の傾向にある。原因が明確でなく労災に認められないからこそ防止の必要がある。赤発などのアトピーは何度も洗剤に触れているうちに抗体が出来て皮膚障害が起きる。

写真3 筆者の例であるが、体調によるが洗剤の中の
アミンに反応するように思われる。


 ある現場から問い合わせで皮膚が時々赤くなるため、皮膚科で診察を受けたら使用洗剤のパッチテストを進められた。これは腕の内側に洗剤を塗り、反応を見る方法であるが、ビルメン現場の洗剤では絶対に行わないで戴きたい。
 最近、女性がパッチテストを知っているのは、毛染め液の皮膚障害が多いため各メーカーがパッチテストの方法を記載しているためである。しかし、ビルメンで使用される洗剤は非常に強力な商品がありテストは危険である。いずれにしても手あれは女性にとり大きな問題である。今後のクリンクルーの養成にも差し障りが出るため、安全教育にぜひ取り組んでいただきたい。
 あるビルメンでは洗剤を@本社の許可を得て使用する製品A現場責任者の指示を受けて使用する製品B自由に使用できる製品の3種類に分け使っている。これはよい方法である。そのためには現場で出来る洗剤の見分け方が必要になる。



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