BM技術講座 メンテナンスしやすいトイレとは1、清掃から見たトイレの歴史 最近、トイレ製品の技術の進歩はすばらしいものがある。50年間トイレ現場にたずさわった者にとつては特にこの感は強い。トイレのメンテナンスについて語るとき、まず初めに考えたいのは、最もトイレが必要な場所である公衆トイレである。なかでも駅舎のトイレは使用頻度が高く、トイレメンテナンスを研究するには最適な場所である。 この場所は、高価なトイレの販売研究には向かないが、メンテナンスや清掃効率、清掃効果の研究には最適である。その理由は、汚れのひどさと清掃頻度の必要回数が、家庭はもちろん事務所ビルとも比較にならないほど過酷だからである。 1950年代の上野駅のトイレは、トイレを語る原点の場所ともいえる。ここにはトイレの歴史がつまっている。当時の問題点は行列が出来ない事と汚れていない事の2点であった。現在、当時の写真はほとんどない上に、トイレの歴史を見るうえで参考にしていた南武線、東武線、大師線、鶴見線などの古いトイレも改装されて昔のトイレは姿を消した。 筆者の記憶では新橋駅は1939年には水洗化されていたため、上野駅もそのころは水洗化されていたはずである。 当時、日常掃除は駅員さんの仕事で、定期清掃が鉄道弘済会の仕事だった。このため、1人で簡単に掃除し易いことがトイレの条件であった。2点の写真は新型であり流水式(トルコ式)と呼ばれている。右は便器内の溝の上に水が流れる形式でいわゆる川屋である。左は床全体に水が流れ、足を置く場所だけ高くなっている形式である。昔は陶器の便器とセメントで作られていた。写真の製品はプラスチック製でかなりあとの物である。清掃の点では左側が優れている。 しかし、トイレに課せられた2つの条件 1、行列が出来ない 2、清掃しやすいトイレの問題はいまだ解決されていない。 下の写真は昔のトイレを改造したものである。上野駅を初め駅舎のトイレはほとんどこの形式であった。その理由はトイレの使用効率が高いことと清掃がしやすいことである。行列を作らないためには、トイレの数を増やせば解決できる。駅舎のトイレはある程度解決されてきた。(反面トイレ数が減った場所もある)。ところが清掃し易いトイレはほとんど研究されていない。(汚れのつきにくい便器は研究されている)このためトイレ清掃には、汚れと臭気を無くすことが課題として与えられた。 2、トイレの清掃とは
水を撒くとあっという間に吸い込まれる。床に吸水性の高いスレートが使用されていた。われわれは2年ぐらいで使用できなくなると予測していたが、3年で作り変えられた。おそらく臭気の問題が出たと考えられる。新しいトイレには、男子用の汚垂石に赤系の花崗岩を使用していたが、この石も汚れがしみこむ性質がある。床面は以前ほど吸水性が無いものを使っていたが、汚れは目立ち易い素材である。 なぜこのようなトイレを設計するかと言えば、これはデザイナーが清掃のことを全く考えずに設計したからに他ならない。デザインが優先され、メンテナンスしやすい素材の検証は何もされていない。しかし、トイレの汚れは清掃業者が悪いの一言で片付けられるのがほとんどである。 3、清掃不能トイレを作らない 清掃のし易さと使用頻度と清掃回数を考えないトイレは、いずれ使用できなくなる。どのようなトイレでも初めはきれいであることを忘れないでほしい。清掃のしにくいトイレは清掃回数を増やさなければならない。これを行わないといずれは使用不能になる。 バブル時に建てられた白大理石のトイレの末路とフランスから輸入されたテラコッタを床に使用したトイレがどうなったかを考えてほしい。当時はスクラップ&ビルドの時代で、作り変えが頻繁に行われたが、今は節約の時代である。 |