BM技術講座

木村光成(木村ブラシ代表)

話題の「東京ミッドタウン」をビルメンの立場から評価


 3月末、六本木に東京ミッドタウンがオープンした。三井不動産と保険会社数社の共同事業である。建物の内容や店舗についてはテレビや新聞で報道さているため、来場者で連日混み合っている。一般の報道はもちろん良い面だけを強調している。しかし、建物が建てば避けて通れない清掃すなわちビルメンテナンスの点から東京ミッドタウンを評価して見る。
 まずこのプロジェクトのテーマは緑とデザインである。広大な緑地の確保を強調しているが、建物を上に伸ばし、地下に広げるということであり、地盤となる地下はすべて建築物であり、里山の土壌とはかなり異なり、生物組成も同じでないと考えられる。将来的には自然と同じ条件を作り出す研究が必要であろう。
 このため、植物もかなりの部分でオブジェが多いように感じた。報道なので写真に撮られる吹き抜け部分の竹もそうである。メンテナンスを考えれば、ビルメン現場は天然物より人工物の方が楽である。それは、落ち葉が出ない点が最大の理由である。
  次にデザインの重要視である。バブル時代に全盛だったデザイン重視は、バブル崩壊後に影を潜めていたが、本年からはデザイン完全主導型になっていると感じる。建築資材を扱っている展示会でも、本年からはデザイン至上主義とも言える展示内容だったことからも明らかだろう。
  ところで皮肉な見方をすればデザイン優先は外見の良さによる差別化といえる。デザインが機能を超えたともいえる。デザインはまず初めに目に見えるが、機能は時間がたたないと目に見えない。その代表が清掃すなわちメンテナンス性である。まず、このことをデザイナーの先生は考慮していない。
  例えば、東京フォーラムのカーぺットが3年で交換されたり、品川駅のトイレを2年でリフォームするなど、デザインを重視したために、メンテナンスが不能となり、かえって汚れが目立ち改修された事例が見られる。メンテナンスを考えずにデザインを重視したことから、汚れのために短期間に使用不能になったという失敗例がある。しかし、改修されるまでには、「何とかきれいにしろ」とビルメンの現場責任者が責められているはずである。

  次に問題なのはビルの債券化により出来るだけ安い費用で建設することが最優先になっていることである。言い換えれば見栄えの良い、建築費用の安いビルということになる。大量に使用されている石材について言えば、低価格ということは中国産の石材が使われていることになる。写真の白と茶と黒は全て中国産と考えられる。外見からだけの判断では正確でないが、白はG603、茶は456、黒は684と考えられる。この石材は特徴があり、大江戸線の大門駅にも大量に使用されていることを確認している。いずれもウォーターかバーナー仕上げである。

  これらの石材は汚れが取れにくいという問題のほかに洗剤、しみぬき剤による変色の事例もあり、メンテナンスする場合は、浸透力テストと鉄分量の簡易テストを行う必要がある。石材は、天然物で性質が同一でないため、採取時期や場所により吸い込みや鉄分量が異なり何箇所かの現場テストが必要である。写真のように3種類の性質の異なる石材が組み合わされていることは、作業がしにくいことはもちろんのこと、同一洗剤でも変色が起きる石材と、そうでない石材が同じ場所に使用されていると言うのも悪条件である。
  吹き抜け部分は、下の部分が花崗岩バーナーであり、上階部分はフローリングであるが、すべて竹であり、まさにバンブーリングといえる。デザイン優先の設計では、メンテナンス要注意の建築素材が多く、ここだけでも素材の違うものが30種類を超えていて、メンテナンス難易度は高い。

  このように新規ビルの要注意資材の予測情報は、見積もり時にはもちろん、日常管理を行う現場には必要であるが、素材ごとに発生するクレームの情報をまとめたものは無い。それは、こうした情報を集約して情報提供するべき協会が、お客様の物件をけなすという理由から、クレーム自体の存在を認めていないためである。しかし、クレームに対応できる技術を持たなければ、苦しむのは現場である。例えば、汚れを早く落としたいために危険な薬剤の入った弗酸系洗剤などを無差別に使用することはクレームの誘発に繫がることは間違いない。現在このような情報はセミナーでしか現場に伝えられない現状である。
  このように大型現場の場合、要注意となる使用建築素材表を作成し、石材判別セット、カーぺット判別セット、木床判別セットなど、簡易判別薬品によりクレームになる可能性のある洗剤、清掃機械、作業法などをチェツクしておきたい。川崎ラゾーナ床材評価表、六本木ヒルズ床材難易度表など各社の事例を参照されたい。ミッドタウンの石材の汚れを判定するにはX線解析などの手法が要求されつつある。最近は携帯用も開発されている。紺商やミヤキなどの業者の必需品である。
  最近、増えているラスタータイルクレームはタイルそのものが多様化して、洗剤についている単純なマニュアルでは対応できない面が出ている。フッ化アンモンや紫色になるチオグリコール酸なども使い方によっては大きなクレームになる。


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