BM技術講座

木村光成(木村ブラシ代表)


03年問題(オフィスビル大量供給)による木床問題

 

 03年に誕生した再開発ビルのメンテナンスで心配されているのが木床のメンテナンスである。多種多様な木床が現れてきたので、今までのメンテナンス法を続けていけば多くのクレームが起きる可能性がある。
 その最大の原因はシックハウス問題により、油性ワックスが学校関係から締めだされていることだ。シックハウス問題の原因は、接着剤と塗料に含まれるホルムアルデヒドやトルエンで、建材の合板木材にこうした物質が含まれ問題になっている。しかし、これらの規制がビルメンテナンスにも大きな影響を投げかけている。この変化は外見では見えないが、クレームという形で初めて認識される。
 本来、木床に水は禁物である。そのため油性ワックスが使用された。油性であれば水性と異なり、そり、われ、きしみ、ねじれ、膨れ、変色(ないとはいえない)などのクレームは少ない。1950年代の現場責任者であれば、剥離剤を床面にまくなどということは行わない。また、フロアーパットもまだ使用されていない。しかし、現在の木床に、なぜ剥離剤を撒きフロアーパットで洗い、樹脂ワックスを塗布するという剥離のシステムが定着したのだろうか?
 それは1950年からの木材用接着剤の発展である。特に初期に使用された尿素樹脂は価格、耐水性など、申し分ない性能があり、水につけても取れないという、今までにない性能があった。これは2液性接着剤で硬化剤のホルムアルデヒドと混ぜるとガラス状に硬化した。欠点は硬化物が硬いため、加工用の刃物がすぐ切れなくなり、われわれもこれには苦労した。また、後にできたゴム系接着剤は凹凸のある床、壁面のコンクリート面への接着に威力を発揮したが、これはトルエンを含んでいた。
 次に優秀な木材用塗料の普及である。代表的なウレタン、エポキシ、ポリエステル、そして床暖房にはセラミックが使用された。そしてこれらの塗料も硬化樹脂分100%(樹脂ワックスの樹脂分はせいぜい30%)の溶剤を含まない塗料(ノンソル塗料)が使用され、つなぎ目も完全にシールされた。
 このような状態であれば高アルカリ、溶剤入りの剥離剤を散布して黒パットを使用しても床はびくともしない。使用された木が桐、黒檀、杉、ヒバ、かりんなど高級木材いわゆる名木でも無関係である。ビニールタイルに印刷されたヒノキはアルカリでも変色しない。
 こうした木床の加工技術が木床メンテナンスの技術を退化させてきたといえる。また、その上に高級木材の不足で木の厚みはますます薄くなり現在では0.2mmが多い。1メートル角の木材から5,000m²の床が作れる。
 このような状態の木床に対し、突然、接着剤、塗料に大きな制限が付きつけられ、今までの耐水性と耐久性が失われ、1950年以前に戻った状態に置かれている。そして悪いことに自然ブームで木床が広く使われだした。03年に完成した新築ビルの中にはエレベータの木床まで現れた。
 また、家庭での木床の使用は、ビルよりも比率が高く、しかも無塗装のむく材の高級品が多く使用されている。ビルメンテナス業界よりハウスクリーニング業界の方がより危険な状態にある。
 今までは木の知識は不要であった。しかし、今後はそれではすまされず、木の判別が必要になる。木の判別で最良の方法は現物の薄い木の板を集めることである。図鑑やインターネットでは手触り、臭い、硬さなどがわからず、色も修正が必要である。
 したがって 現物が最良である。石材も同様である。このように判別を目的とした板を材鑑と呼んでいる。我々は、木材メンテナンス作 成のため、この材鑑300枚以上を集めたが、某協会に全て廃棄された。現在、再度収集を始めている。

下の写真が材鑑


もどる