BM技術講座
木村光成(木村ブラシ代表)


丸ビルのメンテナンス資料が大阪にあった
30年前の資料が今、生かされる(サンプルビルの必要性)

 9月6日に丸ビルがオープンした。このビルは初代がそうであるように今後の代表的ビルであることは間違いない。古い話になるが、丸の内界隈はレンガ造りでロンドンの街並みが再現されていたことから1丁ロンドンと呼ばれていた。
 それから3度目の建替えを迎えている。そしてわれわれが石材メンテに取りくんだ大理石とリノリウムの日石ビルも昔話になり、ご指導いただいた加藤、一田、鈴木の各氏も後輩に後をゆずっている。しかし、これらの人々による、それぞれのビルのメンテナンスデーターと初期の東京駅、中山氏の大丸のオガ清掃資料などは、新しい丸ビルと関連付けて今ならば、まだ残しておける。
 その意味で新丸ビルの建築素材のメンテナンス性を目視でデーター化することを若い人たちと取りくんでいる。(難易度、サンプルビルについての取り組みは、関連協会では実質上禁止されている)
 われわれは@霞ヶ関ビル、A貿易センタービルB住友ビルCサンシャイン60D恵比寿ガーデンプレイスE幕張F横浜ランドマークタワーGさいたま新都心H大崎駅周辺の再開発ビルI品川駅前開発ビルなどについて、ビルメンから見た建築資材の経年変化、クレーム、メンテナンス作業の難易度を『サンプルビル』の呼び名でデーター化してきた。
 そしてJとして丸ビルの建築素材のメンテナンス性が区切りとなると考えられる。サンプルビルの考え方は、同じような素材は同じような経年変化やクレームがおきるという考え方で、特定のビルや場所をサンプルとして経年変化を追跡して記録しておくことにより、新しいビルのメンテナンス手法やクレームなどを予測し防止する考え方である。
 また、難易度はその素材のメンテナンスの難しさ、使用頻度の激しさ、しみぬきなどの難しさなどのファクターを5段階の数値として受注価格、見積もり価格に反映しようと言う考えである。良い品質を得るには対価が必要であり、クレーム防止もただではできない。
 そして、これらの裏づけは前記のサンプルビルのデーターである。その条件は自由に出入りでき、観察できる場所にあることである。そして提案書、見積書、報告書に引用できる条件がつく、勢い公的な建物が主流になる。
 予断であるが、最近ビル内部の撮影が非常にうるさくなつてきた。われわれにとって望ましいことではない。しかし、ビルメン業界内部からのデーター作成に対する圧力の方が対処しにくい。大手ビルメンやISO関係者からの圧力がかなりある。古いデーターが役に立つわけがない。「コンピューターで床は洗えない」が協会関係のある先生の口癖である。ビルメンに取り過去のデーターほど大切なものはない。なぜならば時間は金で買えないからである。
 しかし、これらをデーター化していて使用できる形態にしておかないと新しい業者に現場を奪われかねない。今後は見せかけだけのデーターではなく、内容が問われる時代になる。言い換えれば、そのビルメンの歴史が長いだけではなく、その歴史がデーター化されメンテナンスに利用されているかどうかである。
 ISOも取得しているだけでなく、品質が良くクレーム対応が十分かどうかが問われている。クレーム対応は過去のデーターがシステム化されているかどうかであり、それはサンプルビルデーターや難易度の裏づけデーターそのものである。
 サンプルビルの考え方も最近になって反対も少なくなり、ビルメンテナンス2001年9月号「過去の遺産を未来に生かせ」の題で掲載できた。ご一読願えれば幸いである。

丸ビルのメンテナンスデーターが大阪にあった

 丸ビルの建築素材は今後の丸の内界隈だけでなく、今後の新築ビルに使用されることは間違いない。メンテナンスデーターが必要な素材は8階まででも10種以上にわたるが、地下の壁面に使用されている石灰岩と8階のカーぺットを取り上げてみたい。もちろん外見的な判断からの推測であることをお断りしておく。

 まず、この石灰岩はメンテナンス業界でジェラストーンと普通名詞的に呼ばれている。化石の豊富な石灰岩である。
 ところで我々は15年前から大阪の梅田地下街をサンプル現場として利用している。その理由は大阪で必ず通過する場所であり、立ち入り自由、非常に石種が豊富であり、使用条件も過酷である。最近は西梅田ではバブル後の石材(新石材)も多い。大理石使用が多いそごう本店もある。大阪は石材の中心である岐阜に近い関係と考えられるが、石種が豊富である。東京八重洲地下街と比較しても桁違いに多い。そこに丸ビルのジュラストーンが使用されている。また、ポテチーノのクレーム表層剥離も見られる。
 そのうえ周辺ビルには丸ビルで使用されているガラス系の床材も豊富に使用されている。これらは願ってもないデーターが得られるのである。それはメンテナンス手法や使用頻度により差異が出るが、ある条件下の丸ビルの何年か後の姿となる。
 そして、これに類似の石材は台場、上野駅、NTT、新宿東口などで使用されている。当然これらジェラストーンサンプル現場のデーターは、クレームの予測に有用である。この石材は豊富な化石を含むのが特徴であり、これを設計者も狙ったと考えられる。
 特に丸ビルの地下だけで250を超えるアンモナイト化石が見られる。アンモナイトは中生代の代表的標準化石で、その石材の時代を決めることができる。現在化石ブームであり、これらの見分けと時代の判定は小学生おたくに聞いたほうが正確である。
 次に目を引くのはカーぺツトである。やはり、ビルのイメージを変えるためにデザインの大きな変化が見られる。このカーぺツトは30年前に建てられた貿易センタービルで使われていたものである。このビルで使用された輸入カーペットは、コードカーペットである。タフトが畝状であるのが特徴で、最近の手法である後から模様を加えるオーバープリントである。
 30年前のカーぺットは、バキュームの効率が悪く,現場責任者のセイビの多米さんと機械を改造して対応した。その後、コードカーぺットは歴史の舞台から消えカーぺットメーカーのセールスさえ現物を知らない状態であった。
 このように、ほかの現場や過去の現場のデーターは業界にとって有益である。ビルメンに歴史は不必要という先生方がまだ多い。カーぺットメーカーにとっては今年のカタログだけでよいが、我々ビルメンには古いカタログが必要である。こうしたことから過去のデーターをデジタル化することの重要性を認識していただき、デジタル化の動きを禁止しないでいただきたい。

台場使用例 ジェラストーンのアンモナイト 大阪西梅田ジェラストーンのアンモナイト
ジェラストーンは錆びが出やすい。
日常の洗剤に注意
大阪西梅田のポテチーノの表層剥離、
丸ビルにも同系列の石材がある。洗剤に注意


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