BM技術講座

木村光成(木村ブラシ代表)


石材からビルの老化を予測

 

 ビルメンテナンス業界では、公共物件の複数年契約を求めている。そのためには複数年契約がビルの資産価値の維持にどのような効果があるかという具体的な裏づけが必要である。しかし、その裏づけのひとつとなる、石材メンテナンスからビルの状態が予測可能であることの公表を事実上禁止してきた。そろそろこの禁止を解く時期ではないだろうか。
 東京ビルメンテナンス協会の石材メンテナンスからもこの項目が削除されている。清掃委員会では、メンテナンスにそのような項目を加えても金にならないとの理由で削除し、それらの事例を示す写真は掲載されたが解説は削除された。
 ビルメンテナンス現場では、クレームの発生時期をカーペット3年、石7年と言われている。しかし、最近これが崩れ始めている。1年程度で石もカーペットも問題が出始める。もちろんどんな状態でもオーナーがそれを容認していれば、いくら汚れていてもクレームではない。
 そして、このクレームの発生を予測し、対策を取るのがクレーム対応である。このためには2年から3年のデータ集積をして、初めて起こるべきクレームを予測できる。そのための複数年契約であり、この観点からの複数年契約はビルメンテナンスの利益確保、権益確保の目的ではない。
 カーペットは永くとも10年でほぼ交換される。しかし、石材は30年以上使われるし、価格も費用もはるかに高い。石材とカーペットの根本的違いは、カーペットはそのビルのハウスダスト情報であり、言いかえれば室内環境衛生状態を示すのに対し、石材はその下のビルの鉄骨やセメントの状態や応力の不均衡を示す場合があることだ。つまりビルの寿命、健康状態を示すことになる。
 これらの情報公開がビルメンテナンス業界で事実上禁止されているのも無理からぬ面がある。これに関連するセメント劣化に関する研究はゼネコンからの猛烈な圧力があり、ようやく数年前に一般に知られ始めた。
 ビルメンテナンス業界も、メンテナンスはビルの寿命を延ばし資産価値を高めるというだけでなく、裏づけの数値を作らなければならない。そうすれば裏づけデータから必要な費用をメンテナンス費用に含めることができる。そんな研究は寝た子を起こすとして禁止する時代ではなくなりつつある。
 そのためにはまず初めに技術書である「現場でできる石材の見分け方」を拡大して、「現場でできる石材系素材の現状分析」として内容を増やしたものにする必要がある。そしてその結果を定期的にオーナーに報告する。これを1年から2年分まとめ、ビルの健康診断として提出する。また、高校のクラブ活動で行われている石材の薄片作成技術なども取り入れる必要がある。これらをビルメンテナンスの立場で技術として確立することができれば、複数年契約必要性の強力な裏づけになる。これらの技術が清掃委員会で実質上禁止されている状態の解禁と同時にこれらのデジタルソフトの解禁が必要になる。


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