BM技術講座
木村光成(木村ブラシ代表)


ハウスクリーニング現場の
カーペットクレーム(1) 

 カーペットクレームは過去30年間のクレーム1400事例の30%を占める。ミラサム、ワッカム発足時には、ビルメン業界からの問い合わせが増加したが、塩ビバックタイルカーペットになると激減した。そして、最近また増加傾向にある。しかし、ハウスクリーニングに関しては減少していない。表面化するものが多いか少ないかである。最近の面白い現象が起きている。それは、リサイクル市場でのカーペットクリーニングの問い合わせである。バブル時の段通や高級タペストリーのリサイクルが原因だろう。


1、クレームの特徴

 @クレームの責任はほとんど業者になる。(逃げられない)
 Aあしの腫れなど残留洗剤によるクレームがある。
 B臭い、乾燥しないなども、素足で使用するハウスクリーニングクレームの特徴
 C落ちると言われたしみ、汚れが落ちないというクレームが多い。
 D海外からの土産品の段通などの色落ちクレームが多い。
 Eクレームにはビルの場合と異なりPL法が持ち出される例が増えている。ビルメン業界とは異なり国民生活センターへのクレームが多い。関連法規、判例の知識が必要。


2、クレームの防止

 ハウスクリーニングのカーペットクリーニングは、ビルのそれとは異なり桁違いの知識、技術が必要である。そして、きれいさ(品質)に対する要求は高い、受注価格は低落している。作業の安全性と簡便さなど、誰でもできる技法では継続的な顧客の獲得はできない。
 ある資格認定講習会で洗剤は中性以外を使用しないという説明があった。その後のアンケート用紙に以下の文が記されていた。
 「先生方はハウスクリーニングを経験していますか?」。
 ハウスクリーニング現場を経験していれば、パウダークリーニングや中性洗剤を使えなどとはいえないだろう。特に年末から3月へかけての引越時のハウスクリーニングは引越す人も、大家も、不動産屋も、安い費用で最大限のきれいさを要求する。それは、完全にきれいにできれば、張替えが不要になり、金が絡んでいるためである。彼らの品質評価と業者の選択に対する眼識は、最高のインスペクターである。
 このような仕事をこなすには洗剤に関してだけでもアルカリ、酸、還元剤、漂白剤、溶剤などのかなりの知識が必要である。もちろん、これらの薬品でクレームを起こせば作業者の責任である。「中性洗剤を使いなさい」などという言葉は、現場を知っているクリンクルーには空虚な言葉である。
 このシリーズの目的は、クレームの原点を探り、それを修正すればクレームを根絶できるということである。クレームがなければ、品質の良い何よりの証明であるとの考えによる。
 クレームの原点は間違った知識である。ハウスクリーニングを含めたビルメンテナンス業務は対象物の種類、性質が余りに広く、この業界ほど幅広く深い知識の必要な業種はない。しかも全く知識を持たずにできる部分もある。しかし、この場合、多くの例外を知らないと確実にクレームに出合う。この業界でマニュアルや用語辞典ができにくいのはこの理由であり、これらがクレームの原因になる可能性があるからである。 現在まで発表を事実上禁止されていたカーペットのクレーム資料(写真と解説)を少しずつ掲載して行く。ハウスクリーニングでのカーペットクレームを防止するには、少なくともビルのカーペットマニュアルや常識を捨てる必要がある。その理由を下表に示す。
 次にその事例を模式グラフで示す。数値は傾向を示す。  わかりやすさを優先したため用語の使用は正確ではない。(シャギーなど)
 わが国におけるカーペットの使用方法は外国のそれと異なり、ベッドでありソファーである。このため外国のシステムによる残留洗剤によるクレームが多いのはそのためである。


ハウスクリーニングにおけるカーペットの種類

注1、マンションの共用部はほとんどタイルカーペット
注2、ホテルのカーペット構成に似ているが質的に異なる。
注3、置き敷きが多い
注4、バブル時みやげ物としての段通、タペストリーにクレームが多い
注5、 ベルギー物には同一デザインでウール物、アクリル物が存在する。(ディスカウントストアーで販売される)


ビルクリーニングとハウスクリーニングの差異
NO ハウスクリーニング対象カーペット
1 カーペットの種類の多さ。ビルでは90%がナイロンタイルカーペット
2 繊維の種類の多さ。各種繊維を含む混毛がある。
3 ほとんどが初洗い。初洗いは縮み、変色の危険が多い
4 しみの種類の多様さ、落ちにくさ
5 素足での使用、(残留洗剤のかぶれ)国民生活センタークレーム


 最近のビルは、ほとんどがナイロンループタイルカーペットである。このタイプはほとんどクレームはない。このため以前と比べカーぺツトクレームの恐ろしさを知らないクリンクルーが多い。カーペットに多くの種類があることを大手デパートなどで確認し、価格などを調べ、これらの商品を見分ける目を養う必要がある。


3、ハウスクリーニングにおけるクレーム事例

 @ベロアの起毛不良  ハウスクリーニングのクレーム事例のうち最近増えている例はベロア調のカーペットである。最近は価格を抑えデザインで勝負する新築やリニューアルが多い。ベロア調カーペットは目先を変える良い材料である。表面がビロード状であるために、通常の起毛ブラシでは筋がついてしまいこれが簡単には取れない。ましてプラスチツクの起毛用具グルーマーなどではより悪い結果になる。これはごく細いワイヤーブラシが良い。ステンレス0.08mmがりそうである。
 Aシャギーの吸い上げ  シャギーカーペットは下の写真にある毛の長い製品で白やベージュが多い。アクリル製品は価格が安いので良く使われている。毛が長いためハウスクリーニングでは洗浄を依頼される。  しかし下の汚れやアルカリ洗剤によるジュートの色が表面のパイルの先端に浮き出てくるクレームが多く、これを知るハウスクリーニング業者はアクリルシャギーを避ける場合が多い。  このクレームはそのほかのクレーム原因の解明ができる非常に重要なクレームである。使用された洗剤はカーぺツトの繊維を伝わりカーぺツトの繊維の最上端で蒸発するそのとき水分は蒸発するが汚れや色素はそこに残るため先端が着色する。この現象から以下のことが分かる
 Bアルカリ洗剤を薄めれば無害であるとはいえない。洗剤はカーぺツトの表面に濃縮される。このため洗剤による足裏のはれや繊維の洗剤やけを引き起こす。0.5%のカセイソーダも濃縮されれば10%と変わらない。蒸発するアンモニアとは全く性質が異なり中和とリンスは必要である。  ハウスクリーニングに関するクレームは国民生活センター、またウール製品用洗剤については国際羊毛事務局に相談されたい。


シャギー使用例 シャギーの吸い上げ
タクトの先端に汚れが吸い上げられているのが分かる


ビルクリーニングにおけるカーペットの種類
注1、ほとんどがナイロンループ塩ビバックタイルカーペット
ハウスクリーニングにおける使用繊維
注1、家庭物はウール志向がある。
注2、絹は超高級段通の場合がある。
注3、アクリルは風合いがウールに似る。
注4、レーヨンは綿を意識した自然志向であるが
吸水量が多く、乾燥不良クレームが多い
高吸引力の機械の使用とノズル水量の絞込み。
ビルにおける繊維の種類
注1、ポリポロピレンは有害物質が出ないため今後使用される可能性がある。
注2、120度で溶解するためパットによる焼きつきが起き易い。
ハウスにおけるテクスチャー
注1、テクスチャーとは、カーペット表面の加工状態を言う。
カットは表面が切りそろえてあるもの。
ループはリング状になったもの。
シャギーはカットで毛の長いもの。ベロアはビロード状。
注2、テキスチャーにはハイローなどそのほかに種類が多い。
ビルのカーペットテクスチャー
注1、事務所ビルではほとんどがループタイプである。


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