BM技術講座

木村光成(木村ブラシ代表)


2003年問題(オフィスビル大量供給)による石材の変貌

 
1、2003年 ビルの成長、中国産、ブラジル産石材の使用によるクレーム

 丸ビル、六本木、汐留、品川など、大規模再開発エリアに新築ビルが完成している。私が現地を訪れ調べたところ、これらのビルの石材は従来のメンテナンス法が通用しない石材がかなり存在する。いわゆる難易度5(通常のメンテナンスではクレームになる可能性がほぼ確実)の建築素材である。
 その理由は
@ バブル後に安い石材が求められ新石材(中国産花崗岩、ライムストーン、クオーツサイ ト、スレート、砂岩)が使われている。

A
 PL法により、すべり事故の訴訟が多発し、すべり止めのために床面のバーナー仕上げが 大部分を占め、本磨きが激減した。このため汚れやすく汚れが取れにくい。(本磨きのほうがバーナー仕上げよりはるかにメンテナンスが しやすい)。このため弗酸系洗剤の使用が増加して、石材表面が侵されるため、石種によっては、さらに汚れやすさを増している。こうし た難条件の上に、価格が桁違いに安いという理由から中国産、ブラジル産、インド産、アフリカ産などの石材が使用され、今までに無い色 や模様がある。これらの石材は使用実績がないためメンテナンス方法が明確でない。しかもゼネコンや洗剤業者はクレームに対して責任は 持たない。バブルが崩壊したあと、価格の安い新石材のクレーム発生時期が重なっていたことを振り返ると、オフィスビルの大量供給によ る安価な石材を使っているために起こる各種のクレームが発生している理由がわかる。

B
 ゼネコンは相手に知識がないと全て責任を 転嫁する例が多い。1例として,さいたま新都心で石材に錆が生じ、ゼネコンいわく「花崗岩に鉄分はない」として、全てビルメンの責任 にされた。これに反論する現場データを各社が現場で作成できないため、錆抜き作業の負担を強いられる結果となった。


 
2、中国産石材の特徴

@ 価格が桁ちがいに安い。

A ほとんどの花崗岩の種類がある。現在、花崗岩が主であるが、スレート 類が輸入され始め、大理石、ライムストーン、砂岩も大量に在庫として眠っている。

B 以前は品質が悪 いという問題があったが、改善されつつある。

C 輸出の場合、中国産石材はG623などで表現される 。番号で産地石名がわかる。(Gはグラニット、花崗岩の意味)


 図1のように山東省産出の花崗岩だけ で24種ある。距離的に近いこともあり、今後技術的な問題が解決すれば、ほとんどの石材は中国産になる可 能性が高い。先月、国会議事堂に落雷し破損した国産石材はなくなる可能性が高い。これらの入手不能な石材 の保存もビルメンの仕事の一部であるが、あまりにも保存技法知識が少ない。



 
3、中国産石材のクレーム事例と予測

 中国産石材は六本木ヒルズ、汐留、品川などに建つ新築ビルに使用されている。クレームの主なものはG684黒花崗岩の変色(白化)、酸性洗剤によるつや落ちである。

 写真1は、染色されていた石材が色落ちした例であり、当然ビルメンの責任にされる。

 写真2 は、G684であり、石材の中の丸い石粒が目安になる。都営線大門駅は床、壁全てこの石材である。
 また、この石は酸性洗剤でつや落ちする場合がある。特にトイレに使用される可能性が高くここでもビルメンの責任になる。提案書の先出しが必要。
 この石材はバブル崩壊後のビルに広く使用されていて、かなりのクレームが見受けられる。

 写真3は、G623で錆色の石である。しみになりやすい のが特徴で撥水剤は効果が少ない。単純計算でも汚れの吸収が、黒み影(インパラブラック)の12倍あり、けもの道やしみの発生は当然で ある。丸ビルが代表的現場であり、今後この色は木材との色合いが良いため多用されうる。


図1 図2 図3




 
4、ブラジル産などの石材のクレーム予測

ブラジル産石材2種

 ブラジル産石材は、ビルの差別化のため色や模様の変化を求めて使用されている。ブラジルだけで花崗岩は400種以上ある。 アルゼンチン、インド、アフリカ、フィリピン、などの石材が使用される傾向が強い。最近の新築ビルでは、 グリスペルラ(アルゼンチン)やパラダイス(インド)、アフリカ産のグリーン系などが代表である。 これらの石材はメンテナンス性が全く不明のまま施工されていることである。
 特長は、@吸水性が高く獣道、しみができやすい A酸性洗剤で損傷する B強アルカリでの変色 C酸化漂白剤での錆の発生などが報告されている。
  少なくとも薄片作成による含有鉱物の判定、吸水性、汚れの目立ち率、スンプ法などのデータをビルメンがそろえてオーナーに提案し、 作業法に取り入れる必要がある。それと共に現場でできる石材判別法の普及を行う必要がある。 また石材用洗剤販売業者に安全性の資料責任を持たせることである


5、スレートなど新石材の使用によるクレーム

写真A

 研磨を行わない割り肌の石材、いわゆるスレートがトイレ、マンションなどで使用されている。これらは本来、 屋外使用であり、言いかえれば汚れたまま使われる石材である。これらが低価格を理由にトイレ、通路、 コンコースなどに使用されている。特に中国産スレートが入りだし、ビニールタイルや塗装床よりはるかに安いため多用されつつある。 汚れやすく汚れが取れないためクレームも見受けられる。
 品川駅トイレ、目黒駅ビル、新宿駅ビル、札幌JRタワーなどである。
 写真Aが代表的割肌石材である。これらの石材は変成岩が多く性質もいろいろでメーカーにより分類も呼び名もまちまちである。 この石材に水や洗剤を落とすと見る間に吸い込まれる。しかし、これら最近の石材はメンテナンス性の悪いものばかりでない。 中国産の山西黒など汚れをほとんど吸い込まないものも多い。受注ビルの使用素材の難易度判定と裏づけデータのある提案書の提出が必要である。 クレームになるかならないかはオーナーの判断であり、その石材の使用場所が大きく影響する。


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