BM技術講座

木村光成(木村ブラシ代表)

クレームの原点は間違った情報から


―砂岩が洗剤で溶けた。高圧洗浄機で傷ついた―

 今夏、砂岩に関するクレームが多発した。その理由はヒートアイランド現象を防止するために行われた「打ち水大作戦」とグリーン化のための散水に使われた、中水が影響していると考えられる。
打ち水作戦やグリーン化により使われる中水が、外装に使用されている石材の汚れを呼び、必然的にこれら外装石材の洗浄が指示され、クレームの多発につながっている。またグリーン化やヒートアイランド現象防止のためとして、非常に吸水性の高く、価格の安い石材が輸入され売り込まれている。吸水性の高い石材は汚れが目立ちメンテに大きな負担になる。
約1年で改修された品川駅にあったトイレは、床に吸水性の高い石材が使用されていたのが改修原因である。この例からも建設素材が、いかにビルメンテナンスに影響するかを現場監督者などは知る必要がある。

クレーム事例1

砂岩を洗剤業者の指示に従い、酸性洗剤で洗ったところ泡が出て色が変わった。
現在、作業は中止しているが、このようなことが起きるのだろうか。ある資料には砂岩は火山岩が堆積したもので、酸性洗剤で洗うのが一般的であるという資料がある。私のところにも、このような質問が現場からあった。砂岩は酸性洗剤で洗浄できるという情報が流れている。この情報の一部は正しいが、一部は間違いである。

砂岩の成因と性質

砂岩は砂が高い圧力と長い年月で固まり岩となったもので、いわゆる堆積岩である。
しかし、その砂の性質、すなわち砂になった元の岩石が問題である。元の岩石を母岩と呼ぶが、母岩には花崗岩系の砂岩と大理石〔石灰岩〕系の砂岩がある。また、花崗岩系砂岩でも石灰岩を含むものが多い。これも大理石系砂岩といえる。
では砂岩は酸性洗剤で洗えるという情報はどこから出たのだろう。10年前は砂岩といえばインド砂岩であった。これは花崗岩系砂岩で酸洗いができた。しかし、バブル時代、世界中の石材が輸入され、ビルのデザイン競争が始まった。砂岩も30種を越える石種が輸入され、その多くは大理石を含んでいるため、これらは酸洗いができない。この情報は10年前の機材メーカー情報の受け売りであろう。以下実験を示す。


写真1、インド砂岩(赤)に酸性洗剤を落とす。変化なし、吸い込みは非常に早い


写真2、 スペイン産砂岩に酸性洗剤を落とす。吸い込みは早く、盛大な泡が出る。


このように泡が出たり、変色する砂岩は多い。酸性洗剤を使用する場合は、必ずテストが必要である。まして弗酸系洗剤は使用すべきでない。最近問題になっているのが、撥水剤を中途半端に塗布したことが原因の洗浄むらや変色である。撥水剤も剥離しにくい,歩行には弱いという大きな欠点があることを知った上で、使用することである。
しかし、販売業者は利幅が多いため撥水剤を売りたがる傾向にある。 また、効果を得るためにはかなりの量の塗布が必要であり、その場合は色が暗くなる。そうであればワックス使用がコスト的に安い。こうした長所と欠点をよく考えることである。

クレーム事例2

外装用石材のコケや汚れは高圧洗浄機が使用されることが多い。洗剤使用は、植え込みなどの植生に影響が出るためである。特に噴水や流水のコケで洗剤は使えない。以前は藻の発生防止用に含重金属薬剤が使用されたが、環境汚染の問題で使用されないことが多い。
また、影響の少ない薬剤は効果も少ない。この点、高圧洗浄は能率的にも良く、使用が多くなっている。ところが洗浄力を挙げるため圧力も高くなりがちである。そこで、もろい石材、代表的な砂岩やライムストーン(パラデオや最近のルーブルライムは柔らかくもろい)の高圧洗浄機による掘れや割れ、目地の損傷が多発している。これも打ち水や散水によるエフロの発生の増加で洗剤を使用しないで高圧で、できるだけ落とそうとしたことが原因であろう。30kg程度の圧力でクレームが起きる場合もあるので、現場作業者は注意しなければいけない。


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