BM技術講座

木村光成(木村ブラシ代表)


知られていない次亜塩素酸ナトリウムの危険

アルコールやアンモニアと混ぜると有毒ガスが発生

 カビキラーを代表とする次亜塩素酸ナトリウムは、ビルメン業界で最も広く使われている漂白剤である。現場では剥離剤、カビキラー、サンポールの三種の 洗剤があれば、ほとんどの作業が可能である。あとは使用濃度の使い分けだけだが、これらの洗剤は全て皮膚障害を引き起こす。
 それでも労働災害の事 例集である(社)全国ビルメンテナンス協会発行の「ひやり、はっと」事例に記載されたことはない。しかし、消費者生活センターなどへの洗剤、化粧品の皮 膚障害やハウスクリーニング後の残留洗剤による足裏の皮膚障害などの事例はかなり多い。
 ビルメンテナンス現場のクリンクルーは皮膚が強いのだろう か。そう思うほど、問題が表面化しないが、現実に私は皮膚障害や洗剤アレルギーを経験した多くの事例を目にしている。ビルメンテナンス現場は、汚れを落 とすため家庭用洗剤よりもはるかに強い洗剤を使用しているし、使わざるを得ない。その代表例が弗酸系洗剤であり、ユーホーケミカルのミカゲクリーナーな どである。同社の場合は内容を明示して注意を促しているが、恐ろしいのは弗酸系洗剤で内容の明示をしていない製品であり、それはフランチャイジー系の外 国製品に多い。
ビルメンテナンス業界では、指先や爪が変形している場合は外装業者といわれている。外装の場合、弗酸系洗剤の使用が多いからである。 しかしこれは現場の特に下請けの話である。社内報や関連協会誌にはこれらの問題は全く見かけない。ところが珍しく厚生労働省からビルメンテナンス業界に 通達がでた。次亜塩素酸ナトリウムの事故についてである。
 2005年6月にビル汚水の沈殿に使用されるポリ塩化アルミニウム(酸性)のタンクに次 亜塩素酸ナトリウムを間違えて注入して「混ぜるな危険」の事故を起こしてしまったからだ。その結果関係者24名と客8名に塩素による軽症者がでた。この 場合は被害者に客が含まれたため表面化して通知が出された。
 カビキラーに代表される次亜塩素酸ナトリウムは、酸性洗剤と混ぜてはいけないことは広 く知られている。特に浴室、トイレは酸性洗剤、代表的なサンポールがある。いわゆる「交ぜるな、危険」である。ところが混ぜられないのは酸性洗剤だけで はない。アルコール、アンモニアなども混ぜると有毒ガスが発生する。もちろんレモンや酢は酸性であるから当然である。
 最近、家庭用カビ取り剤にこ れらの表示が加えられているが、こうした情報は、ビルメンテナンス業界では知らされていない。酢は酸性であるが、アルコールは中性、アンモニアはアルカ リ性である。これらのほかに10種以上の物質が有毒ガス発生の危険がある。
 先に記載したポリ塩化アルミニウムなどは通常の家庭では存在しないが、アルコールやアンモニア、酢は身近にある。そしてこれらはビルメン現場でも清掃資材として使用されている。これらが記載されていることは何も公表されていない。このため、かなりの事故の存在が予想される。
 真偽のほどはともかくアルコールとカビキラーを混ぜて使えばカビに有効であるという話はビルメンの指導講師からでたとも言われている。確かにカビにアルコールが有効であり、また次亜塩素酸ナトリウムはカビ取りには広く使われている。両方合わせれば、もっと利くと考えそうな話ではある。しかもアルコールは中性であり酸性ではない。一般消費者には「交ぜると危険」の表示だけで理由は必要ない。しかしビルメン現場は清掃のプロである。
 今後、必要なことは現場への正しく早い情報の伝達と「依らしむべし、知らしむべからず」のマニュアル万能でなく、理論と平行実験の必要性である。理論と実験を覚えておけばほとんどの場合対応を考え出せる。
 漂白剤類はもともと不安定な物質であり、単独使用が原則である。もちろん次亜塩素酸ナトリウムに酸は禁物であるが、そのほかにも分解の起こる可能性のある条件は10例を越える。参考として実験セミナーで行われているカビとり剤の実験写真を示す。
(完)

写真1、
 カビ取り剤をいれ、それにサンポールを加えると黄緑色の塩素ガスが発生する。このガスは空気より重く底にたまることがわかる。まもなく植物が漂白され黄色に変色する。
なお塩酸の煙、塩化水素は白い煙である

写真2
 カビ取り剤を試験管に入れ消毒用エタノール、エタノール70%、イソプロパノール含有、を体積で50%加え攪拌する。細かい泡が発生し、明らかに塩素ガスが発生する。しかし各種の酸よりも反応の速さもガスの発生も弱い。
 心臓病,呼吸器疾病、のある場合はこの商品の表示にあるとおり非常に危険である。


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