BM技術講座
木村光成(木村ブラシ代表)
メンテナンス情報396、古いデータは業界の羅針盤
1、過去のデータは業界の羅針盤
ビルメンテナンス業界ほど新たらし物好きはない。関連協会のある指導講師は、現場が集めた3年以内のデータは古いとして目を通すことさえしない。ビルメン業界は常に進歩であり、過去の歴史はビルメンには不必要であるというのが持論である。果たしてそうだろうか。
業界では過去に姿を消した資材や技法が、形を変えて売り込まれていることが非常に多い。例えば、カーペット炭酸ガス洗浄、振動で汚れを落とす振動ポリッシャー、石材のつやを落とさずにすべりを止める薬剤などは、15年前から10数回にわたり販売元を変えて新発売された。
(社)全国ビルメンテナンス協会発行のビルメンテナンス誌でも、同じ物が形を変え、期間を置いて掲載した広告が6社ある。このように過去に消えた商品やシステムは大きなものだけでも50を越えている。
大切なことは、これらがなぜ消えたのかという理由である。大手ビルメンのある現場にはロールブラシ洗浄機(ドライフォーム)が2台も眠っている。これは前の責任者が30年前に1台、20年前に1台買い入れたもの。1台はアドバンス、2台目はワールドである。この2機種は同一メーカーで、商品名が異なるだけで部品全てが共通である。購入者はこれを知らずに新機種として購入した。

現在もこの2台は使用可能であるが、ドライフォームでは落ちが悪いということで使用されなかった。最近はこのタイプの宣伝はほとんど見受けない。その理由を把握していれば、このような棚上げシステムや棚上げ機械はなくなるはずである。
また、当時姿を消したが現在なら使用できる機材があるかもしれない。そのいくつかを列記してみる。
@エスカレーター手すり清掃機(プラスチック製で簡単に着脱できる)
A紙コップつぶし機
Bパウダークリーニング自動洗浄機(写真)
C部屋の隅洗い用振動ポリッシャー(16インチ幅)
D階段用振動ポリッシャー(ハンドル付)
Eガラスの裏表が拭ける磁石付きスクイジーなどーー。記憶されている方もあると思う。
当時のカーぺットシステムに関する説明書を読むと、システムを採用すれば、カーぺットの寿命が延びると書いてあり、その証拠としてアメリカのカーペット寿命は30年が当たり前ということを述べている。しかし、このような公的データはない。
カーペットの寿命は
@カーぺットの種類
A使用頻度
Bオーナーのきれいさの要求程度
Cメンテ受注価格
D世界共通のカーぺット内部までのきれいさの評価法がない。これらのファクターからも単順にシステム導入だけで延びるはずはないというのが私の持論だ。実例を挙げると東京フォーラムでは4年の使用期間を経た昨年、大部分のカーペットが張り替えられた。
当時、問題化して未だに解決されていないものとして、輸入清掃機械が120ボルトのまま製品として売られていることである。国内は100ボルト電源なので、約30%性能が低下する。こうした点は改良すべきである。最近、特に吸引力、風量などの表示が行われなくなり、世界最高性能などの言葉の表記が増えている。 こうした説明と、その後の結果を照合してデータベース化しておけば、同じ過ちを避けることが出来るが、ビルメン業界には全く過去の資料を保存しておく習慣がないばかりでなく、資料データはかなり廃棄されつつある。そこで横浜にある若手ビルメン業者の集まりである「試みの会」の協力を得て、過去のデータ、クレーム石材、木材、カーぺットなど、ビル管理業者に対する提案書などの裏づけ資料になるものや、横浜衛生研究所、神奈川衛生研究所、神奈川県立博物館などのビルメン業界のための研究資料だけでも保存を行っている。これらの資料は今後の現場責任者の人たちが自由に使える施設にするため各種顕微鏡も収集中である。
2、カーぺットの巻き返し
過去の資料を見ていて不思議なことに気がついた。それは不景気の時ほどワックスのつやが求められていることである。狂乱物価の時のカタログを見ていると面白い。そして、その後にぎらぎら感に対するオフィスの安らぎを持ち出し、カーぺットの利点が述べられる。そしてカーぺットが売り込まれるという流れだ。
現在はカーぺットへの過渡期である可能性もある。しかし、一部の大規模店舗への進出が見られる。この予測は当たるかどうかはわからないが、現在カーぺット最盛期に良く似ている状況を実感している。大きな違いは、シックハウス問題の存在とリサイクルの問題である。この2つもある程度クリアーされつつある。以下はビル新聞の記事である。
タイルカーペット床が主流に |
グリーン購入法 調達推進に6品目追加 |
|
グリーン購入法の基本方針が2月8日の閣議決定で一部変更され、重点的に調達を推進する品目にタイルカーペットなど6品目が追加されたことを受け、環境省をはじめとする、すべての国の機関は4月から、基本方針に沿って新たな17年度調達方針を定めた。
|
|
少なくともビルでは、カーぺットの巻き返しの可能性は高い。現在、受注価格は低く競争は激しい。こうした時こそ、過去のデータを羅針盤とすべき時期であろう。
3、カーぺット床記念日
11月8日はカーぺット床記念日ということをご存知だろうか。三井物産出身のフロアメンテナンスコンサルタント兼インスペクターの江森氏、世界カーぺットライセンス認定販売元の日本クリーンサービス連盟の松崎氏、大成株式会社、互光建物管理株式会社、同和興業株式会社、富士工装株式会社、などが参加して決定したが、現在ではほとんど記憶している人は少ない。
それは1976年11月8日、三井物産本社に全館カーぺットが施工され、10年間その機能を保障するというミラサムシステム発足の日がきっかけになった。
このとき住之江織物と住友商事などをはじめ、大手のカーぺットメーカーは、全て大手商社と手を結んだ。しかし、東リだけは独自路線を貫いた。今では、カーぺットメンテナンスに多くの功罪を残して自然消滅している。
重要な点はこの保障システム分析を行い、同じ過ちを起こさないことである。現在カーぺットメンテナンスは1970年代当時に非常に似ている。その例として 1、協会による新しいインスペクション制度 2、新しい世界カーぺットライセンス認定業者の開業 3、新しい輸入機械の販売(日本向け100V仕様でないものが多い)などがあげられる。
これらの選択は、ビルメン業者の生き残りに大きな関係がある。その選択基準は過去の資料である。現在これらのまとまった資料はビル新聞の縮刷版しかないが、これは各ビルメンテナンス協会にぜひ常備していただきたい。現実のデータはビル管理会社やコンサルタントに対する強力な武器になる。
もどる
|