BM技術講座

木村光成(木村ブラシ代表)


ビルメン現場への情報提供とサポートを

 世間では盆休みとなる8月はビルメン現場にとって忙しい時期でもある。そして最もきびしい状況にあるのが現場である。景気回復のうわさの中、ビルメン現場からの匿名の報告が多くなっている。下請法、労災法の改正があっても、なかなか陽がささないビルメン現場である。その中から、いくつかの現場の声を紹介したい。

1、危険な作業への現場サポートを
危険な洗剤とその使用が増えている。弗酸系、高濃度過酸化水素、塩素系溶剤、農薬など、安く早く仕上げる効果を得るには、危険な薬剤を承知で使う以外に道は無い。その場合、「作業手当ての割り増しを考えていただけないだろうか?」という現場の声。
 もちろん通常の安全な作業の場合は、現実には残業手当の返上は通常のことである。しかし、これらの危険な作業は皮膚障害などがおきやすい。また、捻挫などと違い、原因が特定しにくい。建前では、ビルメン業界に危険な洗剤は存在していないが、塩素系溶剤の例では、最近でもビルクリーニング技能士の試験に出題されていることから、現実に下請けではかなり使用されていることがわかる。
 弗酸系というと昔から外壁作業で使ったが、最近は外壁洗剤だけでなく、タンニン用しみぬき剤など日常管理用品でも増加の傾向にある。また、これらの洗剤は輸入品が多いが効果の説明は十分過ぎるほどあるのに注意点の説明は不十分である。

2、日本のカーペット現場はレベルが低いのだろうか?
下請けだけでなく大手現場でも、ベテラン現場責任者のリストラが相次いでいる。50歳代は特に給与が高いため狙われている。そのため、赤字現場の責任を取らされないため、カーぺットの獣道けしと、しみぬき作業を休日に家族とともに無給で行っている。ところがオーナーから日本のカーペットはアメリカのカーペットより汚れているとのある洗剤メーカーの業界誌記事を示され、パウダークリーニングに切り替えれば、現在より安くきれいになるといわれている。
 しかし、私の長い経験から考えても、パウダーは最も優れた技法とは言えない。20年前、その国の清掃レベルをあらわすとして導入されたパウダーが、現在でもほとんど使われないのは現場の技術不足だろうか?
 次にタイルカーぺットは30年使用できるように作られていて、外国では30年は使用されているとの記事を見受ける。しかし、我々現場の経験から納得できる裏づけのある記事は無い。まずカーぺット交換の条件は
@外見上の汚さ
A予算を含めたオーナーの判断である。
次に汚れの条件は
@通行量とビルの立地条件
A清掃費用すなわち清掃作業回数である。

 現場の評価をする場合、客観的なきれいさの測定法と、その現場の投入清掃費の2つが必要である。しかもカーぺットの寿命の判定には上からは見えないパイル内部の土砂の判定も必要である。
 以上の点から、アメリカのカーぺットは30年持ち、日本の現場はメンテ技術が低いという判断は成り立たない。外国にも汚い現場はあるし、30年持たない現場もある。
そのほかの裏づけをあげると、
@大手商社が行った10年保障カーペットシステム(ミラサム)の崩壊
A中性、弱アルカリ洗剤で新品から色落ちするタイルカーぺットがかなり存在する事実
B日本仕様の100ボルトにしていない120ボルト仕様のままの性能が低下した輸入カーぺット清掃機の存在
Cアップライトバキュームの吸い込み仕事率の表示の禁止理由(アップライトバキュームはポット型よりカーぺット清掃性能が勝るとの公的データーがあるのだろうか)
Dループカーぺットより、カットカーぺットは汚れが取れやすいだろうか?
 これらのカーぺットメンテナンス理論の疑問点は、20年来公的な回答が行われていないばかりで無く否定的データーの方が多い。
 これらの現状を考えても日本のカーぺットはアメリカより汚く、30年使用できないのは現場の清掃レベルと努力不足として責任を現場に押し付けてよいものであろうか?
 しかも、これを協会関連の指導講師の一部や大手洗剤メーカーが公表しているのを引用してビルオーナーが値切りの材料にしている。これが現場の首を絞め、業界の受注価格低落に拍車をかけている現状を早急に是正する必要がある。
カーぺットメンテナンス理論を見直し、現場への圧力をサポートすることを今すぐ一刻も早く行われなければならない。

追記:パウダーは指定のバキュームで、指定の回数行っても内部に残留することは避けられない。また、使用される前処理剤が1度の使用量は少なくとも、蓄積するとかなりの量になる。写真はタイルカーぺットを裏返し、棒でたたき出した残留パウダーである。販売業者はパウダーを残すことは汚れの防止になると述べているが、残留洗剤と同じで改正ビル管法では好ましくない。これら残留物は乾燥した場所に生えるサボテンのような好乾性カビ類のえさになる。好乾性カビの研究は、ダニやシックハウス研究と関連するため、わが国の研究は世界のトップクラスにある。ビルメン関連協会ではこれらの目に見えにくいカビについての述べることは好ましくないとしてテキストにも記載されていない。



3、現場への情報提供の試み
ビルメン現場への情報はほとんど資機材配達業者に頼っているのが現状である。古いビルの一人現場などでは最近本社に行ったことが無いというクリンクルーもいる。各社の社内誌もクレーム情報などはほとんど記載されていない。ISO取得企業ではクレームの存在は否定されているのがその理由である。むしろISOを取得していない中小のビルメンのほうがクレーム研究に公に取り組んでいる。このような理由で間違った情報が現場に多く伝わる場合もある。最近は劇毒物や危険物を含んだ良く落ちる洗剤の売込みが多い。それらの口答説明ではこれらの安全性が強調されている。弗酸は虫歯予防に使われる。過酸化水素はかまぼこの漂白に使われているなどである。最近B社で危険な洗剤の見分け方と安全な使用法の実験セミナーが行われた。最近ほとんど行われない実験セミナーとは5人ぐらいのグループで実験を行いながら進行するセミナーである。ビルメンの知識は紙の上では理解でいないし現場では十分役立たないのが実験セミナーが必要な理由である。
同社のセミナー。危険な洗剤の見分け方セミナーの内容は@建築素材に危険A人体に危険、B危険な洗剤を安全に使う。以上の観点から現物を使用しながら実施した。

写真1、
4名ぐらいずつを1グループで実際の洗剤を使い
判別方法とカタログや成分表の内容と異なる洗剤の見分け方などを実習した。
写真2
高濃度過酸化水素による皮膚のやけの状態や
弗酸系洗剤の危険性とガラス、石剤に対する反応実験を行った。
特に販売業者が説明しない使用してはならない事例と
使用後の中和法などの説明が行われた。


4、現場への情報提供の難しさ
ビルメン業界は今後激烈な技術競争の時代になることは明白である。現に建築素材は次々に新しい製品が導入される。そしてそれらはメンテナンスが難しい素材も多い。これは環境衛生問題の厳しさの反映でもある。できるだけ早い情報を現場に伝え技術レベルの向上に努める必要がある。今回のB社のセミナーも参加希望現場の半分も時間がとれずに参加できなかった。現場はそれほど余裕が無いのが現状である。今後ますますこの傾向が強まる。今後は本社の教育が現場に出向き情報の伝達を行うかネットを使い情報を伝達するかどちらも問題があるが当面はこの方法を使い分けて現場サポートを行う方針とのことである。





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