BM技術講座

木村光成(木村ブラシ代表)


クレーム情報、輪じみの理論

クレームの原点を除く

 最近、輪じみ事故が増えている。輪じみとは、しみぬきを行ったあとにリング状の汚れの輪が残る現象であり、この汚れが非常にとりにくい。すすぎやぼかし作業を行ってもとりきれない。ビルメン業界ではハウスクリーニング部門の段通、いす、布壁などの高級品に多発している。輪じみはクリーニング業界では、初歩のしみぬきクレームとしてかなりの部分を占めている。特に白物では補償問題になることが多い。
 ビルメン業界では「しみぬき剤の使いすぎと、外から中にこすらないという作業ミスが原因」として単純に片付けているが、輪じみの原因と対応はそれほど簡単ではない。しみぬき剤、対象素材にも大きな原因がある。誰が行っても輪じみになる場合がかなりあるということである。確実に輪じみが起きる素材はぬらさないことである。最近、流行の吸着性建築素材、これはしみぬきをすればするほど汚れが広がる。

1、輪じみの起きる建築素材
 輪じみの起きる建築素材は
@吸い込みのある〔拭いても取れない〕
A水分が広がりやすいあまり厚みの無い構造
B色調は明色C組織の密な素材が多い。
 吸い込みの少ないビニールタイルや塗装面などでは輪じみは起きにくい。また、表面がワックスなどで処理されていれば輪じみは起きにくい。ただし、これらの素材を溶かす、しみぬき剤を使わない場合である。

輪じみの起きる建築素材
輪じみの多い建築素材 特に多い種類
大理石 ビアンコカララ、タソスホワイト、新宿三井ビルのような初期の高層ビルは石材の厚みが薄い
花崗岩 ルナパール、ホワイトパール
ライムストーン パラデオライムなど水とぎのやわらかい石種
テラコッタ 厚みの無い場合特に危険、本物は危険であるが、最近の類似品は吸水力が無いものが多く安全
カーペット ナイロンループ2ミリの明色物が特に多い。洗浄、すすぎ作業後の吸い上げも輪じみの1種。
3つのタイプがある。@シナ材などの白い材のしみぬき Aオイルステインで染色された材  Bリグニン、タンニンなどの木本来の色素の染み出し。コンパネのアクなど
輪じみ事故の代表で色泣きとちじみが同時におきる。いす、ソファー洗浄で多い。平均にぬらすのがポイント
布 壁 最近の接着剤は水系が多く、輪じみ部分も以前よりはがれやすい状態が多い。
シールされていない厚みの少ない吸着素材、珪藻土、エコカラット(吸着性陶器商品名)吸着性壁紙、吸着性石膏ボード 空気中の水分を吸い込み乾燥時に放出したり、有害物質を取り込んだりする壁やカーテン、 タイルなどが流行しているこれらは水ぶきすると汚れが広がり、乾燥するとしみが固着する。手を出さないことが最良、撥水剤処理があれば水ふき可能


2、輪じみの起きやすい洗剤
洗剤のかけすぎやブラシ、タオルの使い方だけで輪じみは防げない。原因の半分は、しみぬき剤にある。吸い込みのある建築素材特に天然素材である木や石は、しみこみが平均的でない部分があるため、洗浄後に色の差異として現れる、また、石材や木材は種類によって吸い込み量は異なる。そして、その洗剤が溶かした汚れが蒸発した場所に残るのが輪じみである。
比較的吸い込みや、しみこみ量が平均的な白大理石やタイルカーペットでは同心円の典型的輪じみになる

輪じみの起きやすい洗剤〔しみぬき剤〕
洗剤の性質 輪じみの起きやすい、しみぬき剤の傾向
蒸発速度の遅い洗剤 石油系溶剤、オレンジオイル系
浸透力の強い洗剤 溶剤入り洗剤、油溶性洗剤、の1部製品
酸性、アルカリ性洗剤
特殊溶剤
漂白、還元剤
木材のあく

元に戻らない場合が多い
注、輪じみの起きやすい溶剤も配合により安全に使用できる。

3、なぜ輪じみが起きやすい洗剤があり、輪じみは直せないか?
1)強力な洗剤が使われる

 しみぬきは通常の洗剤で落ちない汚れを落とさなければならない。このためには
@しみこみの早い洗剤(溶剤入り)
A蒸発の遅い洗剤(時間をかける)
B酸、アルカリ、特殊溶剤、漂白剤を含む洗剤など、通常の洗剤より強力な商品が多い。元の戻らない代表的なしみぬき剤は酸化漂白剤である。最近は漂白剤を含んだしみぬき剤が落ちの良さだけを強調して販売されている。このため輸入しみぬき剤に注意が必要である。

2)部分的に回数、時間をかける。
 しみ抜きは1度で落ちない場合が多いため何度も繰り返し行われる。

3)部分的に物理的な力をかける。
このような条件でしみぬきを行うため、その部分だけ落ちすぎが起こり、ほかの部分と調整が取れなくなるこれが輪じみであり、修正できない理由である。

4)汚れが堆積している現場ほど輪じみが起きる。

汚れが無ければ輪じみも起きない。新しい現場では輪じみは少ない。

4、最近の洗剤は輪じみを起こしやすくなっている。
 90年代の洗剤規制により、塩素系溶剤など、多くの洗剤、しみぬき剤が使えなくなった。
特に油溶性しみぬき剤は40年前の配合にもどっている。
1950年代
@石油系しみぬき剤
Aパークロールエチレン
Bトリクロロエタン
Cトリクロロエタン50%、F113、50%
D石油系しみぬき剤。
特にCトリクロと弗素系溶剤の組み合わせは洗浄力が強く、引火性がない。また、プラスチックを溶かさない、蒸発速度がよく、輪じみができないなど最優秀の洗剤であった。このように洗剤、しみぬき剤はある面で50年前の性能にもどっているともいえる。
自然にやさしいといわれるISO14000の基準に適合した製品は、ビルメン現場に取りマイナス面がかなりある。洗剤メーカーはこの点はだまっているが、かなりのしわ寄せが現場にかかっている。

5、輪じみを防ぐには
@ 輪じみの出にくいしみぬき剤を選ぶ。最も安全な洗剤は中性発泡洗剤である。ただし洗浄力は弱いので繰り返し作業する。必ず、しみより大きめにぼかし作業を入れる。
A エチルアルコールやプロピルアルコールで蒸発速度、浸透速度の調節を行う。(これはクリーニング業界でおこなわれている技法である)
B コーヒーなどの自動販売機の近くではポリッシャー〔先われブラシでよい〕によるぼかし作業を時々入れる。
C 石材、木床などもリンサーによるすすぎを行う。

写真1
輪じみの理論はペーパークロマトグラフという分析法で説明される。洗剤の性質により汚れを溶かして広がる速さや範囲、溶かす汚れの種類が違うことがわかる。輪じみは洗剤、しみぬきの性質が大きく関係している。輪じみを知らない販売業者も最近多い。(林喬先生資料、ビルメンのための現場でできる洗剤分析)

写真2
石材、木床用リンサーウオンド、水を吹き付け同時に吸引するため表面だけのぬれで済む。吸水バキュームより、ぬれの危険が少ない。吸引力は最低吸い口幅300ミリで2000ミリ水柱は最低限。すすぎは輪じみ、残留洗剤、ワックス密着不良などの解決の有力な手段である。


6、吸着法や湿布法は輪じみを起こしにくいしみぬき技法
輪じみの対応法として現在行われている吸着法はすでに1705年、貝原益軒の万宝鄙事記(まんぽうひじき)に記載されている。浸透力の強い、蒸発速度の速いしみぬき剤をしみ部分に長時間作用させるのが吸着法である。本来はラップをかけないのが原則である。ラップをかけるとラップの縁から洗剤が蒸発するためラップの形に輪じみが残る。ラップ中心部にカッターで切れ目をいれるのはこの意味である。

新宿の大手保険会社で夜中に油性マジックインキで書かれた社長名入りの落書きを消すため、手持ちの洗剤としみぬき剤のすべてを大量に使用して作業したため明瞭な輪じみが出ている。しかし落書きは十分には落ちない。 よりによって弗酸系洗剤まで使用した。とりあえず吸着法によるしみぬきを早朝行った事例である。


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