BM技術講座

木村光成(木村ブラシ代表)


現場で行う撥水剤の評価

埋もれている現場研究

ビルメンB社、ある現場の研究事例

1、ビルメン現場から見た撥水剤データの必要性

 昨年のビルメンフェアで、石材メンテナンスに使用されていた撥水剤を大手ワックスメーカーが販売しだした。 今まではFC業界を中心に高濃度過酸化水素と弗酸系洗剤との組み合わせで販売されていたが、今回吸着剤、 2液型酸化漂白剤とのシステムでほぼFC業界と同じ内容である。
 撥水剤の導入は、現行のワックスシステムと折り合いが悪く、ワックス業界は自社商品の販売を行わなかった。 しかし、販売を始めた背景には、現在の不況下で1桁違う販売価格の魅力に勝てなかったということが言える。
 他社がこれに追従するかどうかは今後の問題であるが、他社製品の使用現場への導入を含めて、 ビルメン全体のシステムの中で考えると、ワックスと折り合いの悪い製品の使用によるクレームが発生することが予想され、 現場の犠牲なしに組み合わせられるかが鍵になる。
 撥水剤の国産メーカーは、シリコン系は東芝、信越シリコンがほとんどであった。 しかし、昨年ルームクーラーのダイキンが弗素系撥水剤を関が原石材から発売を始めた。弗素系は油性汚れに強いといわれている。 これで撥水剤はほぼ全種出揃った。
 販売側はよいことしか述べないが、撥水剤も完全無欠な保護剤でなく、多くの問題点がある。 その問題点がクレームになり、維持管理している現場の責任になっている。
 問題点は大きく分けて次の7つである。 @撥水剤は取り去ることが困難、残留しているとワックス塗布、珪弗化処理ができない A有効期間が不明確で効果の判定法が定められていない B石種別で効果が大きく違う Cメーカーは塗料して発売しているため、歩行による性能低下のデータはない。 フロアーポリッシュ工業会のデータにより、ワックスとの比較が必要 (鉛筆硬度、ウエザーメーターデータは摩擦のない壁面使用のデーターで床面のデーターではない)で、 すべりについてのデータ不足 D石種により使用量や濃度、効果が大きく変わる E白大理石ビアンコの黄化など、内部汚れが取れない Fワックスと比較して桁違いに高価格(施工業者が薄めて施工している可能性がある)。
 ビルメンB社のある現場では、数年来この問題に取り組んでいる。 社内では全く評価されていないが、撥水剤関連データは、丸ビル、六本木ヒルズ、汐留、品川など超高層ビルで、 オーナーへの提案や保証期間の提出などを要求され、販売業者のデータではなく現場での現実のデーターの必要性が高く評価されている。 こうした情報は、他社の各現場で多くのクレーム解決の助けになると考えられるため要点を記載する。
問題の現場は横浜の高層ビル完成時のライムストーンへの撥水剤の塗布、また軽井沢のホテルでのテラコッタの獣道であった。1週間前に撥水剤処理が行われていたが、撥水効果は全くなく、おそらく施工業者が撥水剤を薄めて使用したため効果がなかったと考えられた。
撥水剤は今流行の光触媒と共に桁違いに高価格であり、効果の存続期間の保証が今後、要求されるのではないか。また、現場での品質判定、効果判定が必要になる。これにより測定データを提案書、報告書、インスペクション資料としてビルオーナーに提出し、効果が実証されれば、理由のない現場の責任は負わないことになる。施行会社と管理会社の責任分担の明確化が急務である。
最近、コンビニエンスストアーで来店客のすべり事故による判決がいくつか出ている。注目される判例は、店側だけでなく清掃作業マニュアルを作成した本部が責任を問われた例である。
ビルメン業者も、マニュアルを協会の丸写しや他業者の丸写しでなく、ビルメン現場の立場から法的検討を行い、万一の場合に現場の責任にならないようにする必要があるが、現在の撥水剤の表示は少なくとも十分とはいえない。
(写真)テラコッタはバブル前期に大流行した素焼き素材で、あまりに汚れやすく汚れが落ちにくいため、メンテナンスに無関心なデザイナーも最近は釉薬が掛けられたものを使用し、本物のテラコッタは少ない。本物であればクレームになる率が高い。この系統の製品が最近、汐留の超高層ビルで使用されている。メンテナンス上、注意が必要である。

テラコッタ獣道、撥水剤処理7日目 テラコッタの泡洗浄

2、撥水剤の選択法と性能管理(現場でできる判別法)

撥水剤が流行するのは初めてでない。20年前ミラサム、ワッカムの保証カーペットで防汚剤として使用された。3Mと旭硝子の2社が主力であった。シリコーン系も使用されたが弗素系が主流であり、はじめは加熱しない現場施工タイプが有力であったが、耐久度の違いが大きく、後にほとんど製品への製造工程での塗布に変わり現在に至った。
発売当時、水を全く使用しないでカーペットが維持管理できるという触れ込みであったが、その通りにはならなかった。しかし、このときは旭化成、東レが示した判別法があった。現場施工の場合、洗剤の残留はメチレンブルー法と撥水性能はプロピルアルコールなど溶剤の残留時間測定によっていた。われわれ現場もこれを参考にしている。

接触角はいつまで性能保持できるかが問題

ビルメン現場ではこれらの判定用機材の予算はほとんどなく、自費で行うのが現状である。ただ実験現場にいるという利点はある。頼りは実験計画法とデータ数である。いずれにしてもメーカーではなく、ビルメン関連協会で基準化する必要があろう。また、現場で対象にするのは純粋の撥水剤から最近発売の目地プロテクターやアクリルシリコーン樹脂まで幅が広い。
判別法は現場から見て3つのファクターが必要である。現在、撥水剤は大きく変わるため概略のみ記載する。

現場でできる撥水剤判別法の概要

提案書、報告書、インスペクションに記載する場合写真を添付
NO 撥水剤テスト 使用素材 前処理
前処理液
判別試薬
テスト溶剤、洗剤液
判別事項
接触角、吸い込み速度
室内テスト 撥水剤比較 濾紙 なし 2〜7種種
染料2種
室内テスト 石材効果比較 石材
現場素材
洗浄
現場テスト 石材現場残留効果 石材
現場素材
塗布物の判別と洗剤洗浄とすすぎ

注、撥水剤はシリコーン、弗素系、これらを含むワックスまで含む
注、石材は天然石材、陶磁器、素焼きなどや金属、ガラスまで含む
注、前処理判別液は東京協会石材メンテナンス記載溶剤を使用して塗布物を判別。現場では何が塗られているかわからない。場合により強酸、強アルカリも使用して判別
注、判別試薬は関連協会の石材判別試薬、カーペット判別試薬を流用し、薬品数をできるだけ減らす
注、石材別テストは協会標準石材にライム、スレート、中国産花崗岩を加える。


上、各種撥水剤の比較テスト




3、現場データはビルオーナー、コンサルタントへの対応の唯一の手段

昨年、川アの大型ビルで1円入札があった。今まではビルメンの言いなりだったビルオーナーもコンサルタントを使い、ローカルコストプライスを使い値切り資料としている。また、資材販売側も必ずしもビルメン側ではない。最近はむしろオーナー側になり、ビルメン現場いじめの所まである。現場の身を守るには、このような技術体系が必要である。本社がこれらの研究を握りつぶす状況ではない。しかし、不思議なことにこうした研究開発を阻止しているのはISO部門である場合が多い。


もどる