夏の全国高校野球選手権岩手
県予選で、大船渡の超高校級投
手・佐々木朗希君が、決勝戦の登板を回避。チームは花巻東に敗れ、甲子園切符を逃しました。この春から高野連が有識者会議を立ち上げ、高校生投手の故障を防ぐための『球数制限』について検討を始めた中での出来事。今回はこの話題について、元ピッチャーとしての意見を書いていきたいと思います。
これについては、いろいろな方に質問を投げかけられました。正直、とても難しい問題です。確かに、まだしっかり体のできていない年齢のうちは、そんなに多く投げない方がいいでしょう。ただ高校生ぐらいになって、ある程度体ができていれば、多少球数が多くなっても大丈夫だと私は思います。
私たちは『投げてナンボ』の時代に野球をしてきました。高校時代は土日に3試合、練習試合が組まれていて、ピッチャーは私一人。ダブルヘッダーも、一人で18イニング投げるつもりで臨みました。今では考えられないかもしれませんが、私自身はそれで体が強くなったのではないかと思っています。
野手が『打ち込み』でバッティングの強化練習をするように、ピッチャーは『投げ込み』でピッチングを強化する…という考え方ですね。特にピッチャーの場合、筋トレで上半身の筋肉を付け過ぎると、かえって投げにくくなってしまいます。そのため、投げる筋肉(インナーマッスル)は、実際に投げながら鍛えていったわけです。体を痛めにくくし、筋肉にいい環境を整えてやるための手段として、筋トレを利用していました。
高野連の有識者会議では、最初1試合100球、次に一定期間内の球数制限…と話し合いが続いており、9月に行われる次回の会議で、具体的な数字が検討されるそうです。
高野連に加盟している高校の中には、100人超の部員を抱え、ピッチャーが10人前後いる学校もあれば、部員20人でピッチャーが1〜2人の学校もあります。1試合100球ということになると、ピッチャーを複数用意できない学校は勝てなくなってしまいます。
もちろん、「高校野球は勝つことがすべてではない」という意見もあるのは分かります。佐々木君の場合は、彼の将来を考えて『投げさせない』判断を、監督が下しました。しかし、どんな学校でも甲子園は大きな夢。甲子園に近づけば近づくほど、エースはどんなに疲れていても、毎試合100球を優に超える連投になっても、投げたいと思うでしょう。チームメートも彼に投げさせてやりたい、投げてほしいと思うかもしれません。そんな選手たちの気持ちを考えると、つくづく難しい問題だと思います。
ただ一つ、厳しいことを言わせてもらえば、昨日、今日投げて壊れるような体なら、高校より上のレベルで野球はやらない方がいい。特にプロ野球では連投したから、球数が多かったから肩やヒジが壊れたと言っていては、生き残れないのが現実。実際、プロで大活躍している選手は松坂大輔君(中日)、マー君(田中将大=ヤンキース)…と高校時代、かなりの球数を投げてきています。次回はこの問題について、私なりの解決策を提案していきたいと思います。(2019.8.25号)