「この仕事は男性の仕事か、女性の仕事か」
仕事に関する男女の差は“気持ちの問題”だと私は思っています。ですから、「これは男性、女性関係なくできる仕事ですよ」と、こうして少しずつでも発信していけば、古くからの考え方も変わっていくのではないかと思うのです。
前号でも少し触れたように現状、日本では「トイレ清掃は女性の仕事」としているところが多いですね。でも駅では、女性トイレも男性が清掃していることもあります。しかし私の知る限り海外では、男性トイレは男性が、女性トイレは女性が清掃しています。ハラスメントにつながる(または疑われる)恐れもあるので、私は日本もそうあるべきだと思います。
実際、羽田空港国内線ターミナルの男性トイレを清掃していた時、海外からのお客様が私を見て、トイレを使うのを諦めて出ていってしまったことがありました。「大丈夫ですよ」と声を掛けても、入るのを躊躇するお客様が大勢いらっしゃいます。私(女性)が清掃しているために、お客様にご不便をお掛けしたのなら、申し訳ない気持ちで一杯です。
逆に、女性清掃員から相談を受けたこともあります。彼女が清掃作業をしようと男性トイレに入ったところ、男性がズボンを全部下に下ろして用を足していたそうです。
お客様は他人に見られても構わないと思っているのかもしれませんが、女性清掃員はやはり遠慮して、中に入ることができなかったといいます。あるいはお客様の方が、不愉快な思いをなさった可能性もあります。
彼女はその時、入社したて。そこで男性上司に「こんな場合はどうすればいいですか?」と聞いたところ、「気にしないで、そのまま作業を続けてください」と言われたそうです。
私も17歳でこの業界に入った時は、男性トイレに入ることに抵抗がありました。この業界に若い女性がなかなか入ってこない原因の一つに、こうしたこともあるのではないかと思います。
まずは、男性が男性トイレ、女性が女性トイレを清掃するように変えていってみてはどうでしょうか。
空港やショッピングセンターなど、広く天井の高いトイレ、タイルとカーペットの床が混在しているようなトイレは、男女2人1組になって清掃するのもいいと思います。
こういった場所のトイレにはSKがないため、清掃道具をカートに積んで持っていかなければなりません。しかしタイルを水拭きする道具とカーットを除塵する道具など、持っていくものの種類が増え過ぎて、一人で一度に運ぶのが難しくなっています。加えて、高い天井や壁、壁一面の鏡を清掃する時、平均的身長の女性では手が届かず、作業しづらいこともあります。
ほかにも、カートでゴミを集める作業は今、どこでも大体男性が行っています。
カートが大きいので身長や力の問題かと思い、私もやってみましたが、これは注意力の問題かなという印象でした。見えない部分は目線を変えて見えるように工夫すれば、身長はあまり関係ないと思います。
(2019.3.25掲載)